米:「隣には君がいた」 ページ35
日曜日の昼下がり。
わたしとアルフレッドは廃校になった母校の小学校へ足を運んだ。
「外観は変わってないんだな。」
「わたしたち、ここで6年間を過ごしたんだね。」
生徒玄関前のアスファルトには雑草が生えていた。長い間、誰も足を踏み入れ入れていない証拠だ。
「A。どうせなら校舎をぐるっと一周してみないかい?」
アルフレッドに手を引かれ、思い出をたどりながら二人で歩いてゆく。
窓から見える教室には椅子や机が後ろにまとめて置かれていた。あの机にはいつ使うのかも謎なお道具箱や、給食で残したパンなんかを入れていたっけ。アルフレッドと出会ったのもあの教室だ。
「アルフレッド、覚えてる?アルフレッドがふざけて黒板消しクリーナーを壊したこと。」
「もちろん覚えてるさ。あの時はAがかばってくれたんだったよな。忘れてないんだぞ。」
やたら角が消せなかった黒板消しクリーナーもひっそりとあそこに置かれているのだろう。
「グラウンドではラインカートで遊んだなぁ。」
「運動会前に線を引くアレね。」
「Aと一緒に走るのが楽しみで頑張って線を引いたのはいい思い出だよ。」
「それからタイヤの跳び箱もあるよ。」
「あれでAが怪我した時、俺がすぐに保健室に連れて行ったよな。」
「なつかしいね。アルフレッドはいつでもわたしを助けてくれたよね。」
まさにわたしのヒーロー。ピンチの時は必ず駆けつけてくれた。それは今も変わらない。
「思えば俺、初めてAに会った時から一目惚れだったんだ。Aと一緒にいることが俺の喜びだったんだよ。」
卒業して何年も経って、わたしたちはもうすぐ大人になる。
だから大人になるその前に…。
「Aは幸せだったかい?俺、ちょっとはAを楽しませることができたかな?」
「うん。とっても幸せだったよ。アルフレッドが一緒にいてくれたから。」
楽しいどころか、最高に幸せな6年間だったと言ってもいい。
幼少期にそんな恵まれた環境で過ごせる人が一体どれだけいるというのか?
その幸せな環境で育ったおかげでわたしは豊かな心を養うことができた。そして大切な思い出もたくさんできた。
それはみんな、アルフレッドがいてくれたから。
「じゃあこの先もAの隣には俺がいなくちゃな。俺から離れるなんて許さないぞ!」
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね!これからも頑張ってください応援してます! (2017年10月28日 11時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます!これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです!これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2016年3月10日 21時