羅:「恋のおまじない」 ページ31
無駄に広い学園の中にひっそり存在する魔術部。
西洋風の建築のこの学園は、どこの教室も異国情緒が漂う雰囲気を出しているが魔術部の部室はその中でも特殊な感じがする。
それはわたしの気のせいか、それとも…。
「ルー君!またいつものアレ教えてよ。」
「またそれ?しょうがないなー。」
わたしのわがままも笑って流してくれるルー君。
いつものアレというのは、言わずと知れた恋のおまじない。
「こんなのはどう?この本に書かれてるおまじないなんだけど…」
ルー君がわたしに見せてきた古い辞書のような本。これには太古の昔から使われてきたおまじないやら呪術やら、そういった類の事柄が書かれている。
「西洋のおまじないだけど、Aには『好きな人の誕生日に花の球根を土に植える』っていうおまじないがピッタリだとおいらは思うよー。」
「それってどういうおまじないなの?」
「これは、その球根を好きな人と思い込んで大切に育てるんだって。水や肥料をあげる時は、その人のことを思いながらやるらしいよ。」
「へぇ…すごく時間のかかるおまじないなんだね。」
すぐに効果が出るおまじないを求めていたわたしには合わないものだ。
「Aってさ、いつも恋のおまじないを知りたがるけど…誰か好きな人でもいるの?」
ルー君の言葉にドクンと胸が跳ね上がる。顔が徐々に赤くなってゆく気がした。
「まあ…そんなとこかな?」
本当は、わたしの好きな人は目の前にいる。
「そっか。Aの恋、上手くいくといいな。」
「うん。ありがとう。」
「よかったらおいらの本、貸したげるよ。」
「いいの?ルー君が大事にしてるものなのに。」
「いいんだよ。Aが喜んでくれるなら。」
「でも……」
「遠慮しないでいいんだよ。おいらだって、この本がほんとに必要としてる人に使ってほしいんだ。」
よほど長い年月に渡って使いこなしたのは、本には年季が入っていい味を醸し出していた。そして何より、ルー君の温もりが本を通して伝わって来る。冷えた爪先に染み入るように。
「ありがとうルー君。」
「Aの恋が叶うようにおいらも祈ってるよ。」
ルー君の本を持って魔術部の部室を後にする。
「よぉ、A。あいつとは上手くいったか?」
廊下でアーサーとすれ違った。
「まあ、そんなとこかな。」
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね!これからも頑張ってください応援してます! (2017年10月28日 11時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます!これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです!これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2016年3月10日 21時