希：「苛立ちの三者面談」 ページ30
苛立ちと緊張にさいなまれる三者面談。
閑散とした教室を落ち着きなくうろうろするわたしと、すべてを時の導くままに人生を任せているヘラクレスと二人きり。
「Aは…俺の…あとか……。」
「そうだよ。今やってるのはグプタかな？」
「ん…。グプタ……遅いな…。」
三者面談なんてものは予定通りにいかないものだ。それは大抵が親に原因があると思っている。
「なあ……。Aの…母さんは……どんな人だ…？」
“母さん”
その言葉に胸が詰まる。
「ヘラクレスって残酷な質問するんだね。」
わたしは制服のスカートを撫で、溜め息をついて椅子に座る。ソックスを上げたり、上靴のかかとを踏んだり直したり、とにかく心のもやもやを払いたかった。
「親っていうのは子供からすれば偉大で、そして毒になる存在でもあるんだよ。」
髪の毛を耳にかけ、今度は浅く溜め息をつく。
「親は『親』って立場だけで何でもかんでも偉そうにするからわたしは嫌い。」
「Aは…親が…嫌い……なのか…？」
「うん。夫婦で愛の営みを楽しんで、子供が小さい時期に楽しんで、そして大きくなって面倒なことが出てくると子供を一方的に責めるの。そのくせ『子供のため』とか言って恩着せがましいんだよ。」
苛立ちが徐々に緊張感よりも上回ってゆく。
「子供を作るかどうかは親に一方的な決定権があるのに、なぜか都合の悪いことは全部子供に押し付けようとするの。そしてそれを当然だと主張する自称子供想いの親。ほんと笑っちゃう。」
鼻で笑おうにも拭い去れない苛立ちはどうしようもない。
「とにかく洗脳ってすごいよね！子供なんて親のオモチャなのに、親に感謝しないヤツは人間性が悪いとか言われちゃうんだから。」
そんなもので人間性を計られても困るのに。
「だから毎日のように『さっさと死んで保険金入れろや』って思ってるよ。そうでなければ『老後覚悟しとけよ』って感じかな？」
ヘラクレスは無言を続けているが、その表情は若干引きつっていた。
「…でもね、一応感謝はしてるよ。どんなに腹が立っても今のわたしがあるのは親のおかげだからね。」
「それが…わかってるなら……いい…と……思う…。」
おそらくわたしほど親不孝な者はほかにいないと思った。
やはり、三者面談なんかろくなもんじゃない。
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね！これからも頑張ってください応援してます！ (2017年10月28日 11時) (
レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます！これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです！これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スノーデイ | 作成日時：2016年3月10日 21時
