波:「退屈に衝撃を」 ページ29
肌寒い体育館に、まるで軍隊のように生徒たちが黒い頭を並べて整列する。
何の感情も生まれないその場所で、校長先生の無駄に長い話が続いていた。内容なんかどうでもよくて、中身もすっからかんの話だ。
こうしている間にも、わたしたちの一度しかない人生のうちの時間を浪費させられてゆく。
「あー…長げぇ。マジだるいしー。」
わたしの右隣に並んでいたフェリクスが小さな声で呟く。近くの人も聞こえたはずだが、誰もフェリクスに反応しない。そういう時間なのだ。この退屈な空間では。
「なぁなぁ。Aもそう思わん?」
フェリクスは面白そうな顔をしてわたしに話しかけてくる。わたしなら何らかの反応をするかと思ったのだろうか。
「そりゃそうだけど…そんなこと言っちゃだめ。」
「だって本当のことだしー。Aだって今、俺に同意した。」
「もうフェリクスうるさい。わたしに絡まないで。」
途端にフェリクスはいじけたような顔をして俯いた。
『うるさい』と言ったのはまだいいとして、『絡まないで』と言ったのは余計な一言だったかな、と考えた。わたしには時々そういう悪い癖が出るのだ。それで人間関係に支障が出たこともないわけではない。
「わかった。じゃあもうAとしゃべらんから。」
フェリクスのムッとした表情を見て、安心したと同時に負い目を感じた。
『悪いことをした』という気持ちの隙間に付け入るように、再びフェリクスはわたしに絡んできた。
今度は言葉ではなく、わたしの右手に。
「ちょっと、なにしてるの。やめてよ。」
「しゃべらなきゃいいんだから、これならよくね?」
離そうともがいても、かたく握られた手が簡単に離れるわけもない。
「それ以上やると先生呼ぶよ?」
「呼べば?そしたら俺はこう言ってやろうと思ってるしー。」
「え…?」
「“俺とAは恋人なんだ”って。」
呼吸をするのも忘れて、目を見開いて、もう唖然とするしかない。
自分の耳を疑いながらもフェリクスの顔を見れば、冗談抜きで真剣な目をしているのだから。
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね!これからも頑張ってください応援してます! (2017年10月28日 11時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます!これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです!これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2016年3月10日 21時