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典:「霞む雨の中」 ページ26

熱を持った重い身体を引きずるように、わたしは階段を上ってゆく。


みんな6時間目の授業を終えて掃除をしていた。しかしそれも終わるようだ。


「A。」


低い呼び声。同じクラスのベールヴァルドだ。


「顔色悪りぃない。さすけねぇか?」


ろくに話したこともない人。威圧感があり、無口で誰とも話さないような人なのに。


「うん…ちょっと体調が悪くて。」


でも大丈夫だから、とわたしは言った。


あとはもう帰るだけ。家へ着くまでの辛抱なのだから。


「ん…無理すんでね。」

「あぁ、うん…ありがと。」


何だろう?この奇妙な感覚は。


ベールヴァルドとは同じ教室にいて、たまに目が合う程度で今日のように話をしたことはほとんどない。


ベールヴァルドは何を考えているのか謎だ。無言の圧力のせいで人柄もよくわからない。


なので誰もベールヴァルドには近寄ろうとしないのだけれども、今の様子を見ると、本当は親切で心の温かい人なのではないだろうか?


そしてその人柄の良さを威圧感が隠してしまっている気がした。


「あ、外 雨降ってるんだ…。」


窓には無数の雨粒。景色は雨で霞んでいる。


「A。これ使え。」


またベールヴァルドが話しかけてきた。今度はわたしに折り畳み傘を差し出して。


「雨ん中を帰るのは大変だべ。使え。」

「いいよ!走って帰るから大丈夫。これはベールが使って?」

「いいがら使え。風邪引いだらどうすんだ。」


わたしの手に折り畳み傘を握らせて、ベールヴァルドはカバンを持って玄関へと歩いて行き、そのまま雨の中を帰ってゆく。ずぶ濡れになるのも気にせずに。


言葉にならぬ想いを喉元に残し、わたしはベールの背中を見送るだけ…。

英:「いやな人」→←独:「特別な時間」



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設定タグ:APH , ヘタリア , 学園ヘタリア   
作品ジャンル:アニメ
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね!これからも頑張ってください応援してます! (2017年10月28日 11時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます!これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです!これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:スノーデイ | 作成日時:2016年3月10日 21時

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