北伊：「君がくれた贈り物」 ページ20
８月の日差しは今日も優しく教室に降り注いでいる。
窓側の席のわたしとフェリシアーノの机には木漏れ日がキラキラと落ちていた。夏休み明けの教室ではみんなが気だるげな表情を浮かべている。
「Aちゃん。もうすぐで夏が終わっちゃうね。」
「今年の夏は楽しかったな。フェリシアーノと花火も見たよね。」
フェリシアーノと過ごした夏はぼんやりした頭の中にたしかに記憶している。
ほかのことを忘れたって、大好きな人との思い出は記憶から消えることはない。風のように時間が過ぎ去ったとしても思い出は残る。
その一瞬がカメラに修められたように、その部分は永遠の記憶になる。
「俺、Aちゃんがいれば将来の夢がなくても大きな希望が見つかるような気がしたんだ。」
「わたしもこの夏の間、ずっとフェリシアーノと同じこと考えてたよ。」
「Aちゃんは夢を見つけられた？」
その答えを出すべきか、このままうやむやにしてしまおうか。
「残念だけど、俺は見つけられなかったよ。どんな暗い夜でも朝日は必ず俺やAちゃんを照らしてくれるのに、俺だけには太陽みたいに温かい希望の光が当たらなかったんだ。」
机に視線を落とし、あきらめたようにシャーペンをくるくる回すフェリシアーノ。
「大丈夫だよ。きっと見つけられるよ。フェリシアーノなら。」
「ううん。俺はもういいんだ。だから俺の想いはAちゃんに託すことにするよ。」
「それって…。」
いつもの笑顔で、優しい顔で、フェリシアーノはわたしを見つめている。
「これ、俺からのプレゼント。俺の分まで素敵な夢を見つけてね。」
わたしにも将来の夢はない。フェリシアーノにもなかった。だから何もできないのだ。
そんな天使のような微笑みを向けられて、将来の夢をテーマに書くための作文用紙をプレゼントとして渡されても。
あの日見た宿題をわたしたちはまだできない。
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね！これからも頑張ってください応援してます！ (2017年10月28日 11時) (
レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます！これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです！これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スノーデイ | 作成日時：2016年3月10日 21時
