氷:「ロッジにて」 ページ19
今日は青天、視界も良好。
そんな中、今日はウィンタースポーツクラブの合宿。ロッジには練習を終えた生徒たちが次々とお昼の休憩にやって来る。
スキーウェアのすれる音。靴の重たい音。そしてみんなの話し声が聞こえてくる。みんな寒さや雪に当たった太陽の光を受けて顔が真っ赤になっている。どれもこれも見慣れた光景だ。
「A、練習お疲れ。」
「イースもお疲れ。調子はどう?」
「すごくいいよ。Aも良さそうだね。」
帽子を取ったばかりなのか、イースの髪の毛は少し癖がついている。頬に赤みもあって浅く呼吸しているのは一生懸命に練習してきた証。
「Aは何か飲みたいものある?僕が買って来るよ。」
「じゃあ温かいココアが飲みたいな。いまお金渡すよ。」
「いいよ。僕がおごってあげる。Aにお金を出させるつもりはないよ。」
「ありがとう。それじゃお言葉に甘えさせてもらうね。」
イースはいつでもこんな調子。表情はあまり変わらないけど、その言葉には思いやりが溢れている。
ウィンタースポーツクラブと部活名が変わる前、わたしたちは同じスノーボード部だった。名前が変わった理由は人数が少なかったスキー部と合併したから。そのスノーボード部でイースと意気投合し、今ではこういう関係になった。だからわたしはこの部活が大好きだ。
「A、まだイースと仲良くしてんのけ。」
その声に気付いて振り向けば、そこにはわたしの憧れの人・ノーレ先輩がいた。
「意味わかんない。Aに何の用なの?」
「べつに。ただ話しかけただけだべ。」
スキー部だった時、ノーレ先輩は総体予選にも出たことがある。今ではウィンタースポーツクラブの精鋭で、今度は国体予選に出場するんだとか。
「やっぱりAもノーレがいいわけ?」
「ううん!そんなことないよ!突然話しかけられたからびっくりしただけだよ。」
イースはまだ疑いの目でわたしを見ている。身体がむずがゆくなるような嫉妬の視線だ。
「だから僕は合宿が嫌いなんだ。」
「どうして?」
「Aのせいだよ。僕の気持ちが休まる時がないから。」
ああ、もう。
ココアの甘い香りと弾む心で胸やけを起こしそう。
60人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヘタリア」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね!これからも頑張ってください応援してます! (2017年10月28日 11時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます!これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです!これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スノーデイ | 作成日時:2016年3月10日 21時