中:「遅刻した朝練」 ページ15
もうすぐ陸上競技大会が行われる。
本当はクラス全員で朝練をしなければならないというのに、不覚にも寝坊をしてしまい、教室に着いた頃にはもぬけの殻。
「遅刻、か…。」
わたしは深く溜め息をついて席に座る。カバンをドサリと机に置いたのに、それでもまだ身体が重い。
今さら練習に行っても時間がないし、それにみんなにどんな目で見られるかと思うと怖くてとても行く気にはなれなかった。きっと責められるのではないかという恐怖心が拭えないから、こうして教室にいることしかできない。
たった一人で…。
「Aも遅刻あるか?」
耀が息切れをしながら教室に入って来た。その額は汗で少し光っている。
「うん。耀も遅刻?」
「そうある。自転車のタイヤがパンクして遅くなったあるよ。」
耀の遅刻の原因が正当な理由だとわかると、わたしは自分を至らない人間だと心の中で責めた。いわゆる自己嫌悪。とても心が痛い。その苦痛に顔が歪んだ。
「Aもここにいればいいある。どうせもうすぐみんな朝練から戻ってくるあるよ。」
「うん…でもみんな戻ってきたらなんか言うかな?」
なぜ朝練に出なかったのか、その理由を問い詰められたらわたしはおそらく何も言えない。
「我にはわからないある。」
「やっぱそうだよね。」
「でも心配すんなよろし!非難された時には我がAの分も弁明してやるあるからな。」
その優しい言葉は甘い響き。
口の中に金平糖を三ついっぺんに放り込んだようなフワフワとした甘み。
「もしもその時には教室を出て行くなり、我の後ろに隠れるなり、Aの好きにするよろし。」
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね!これからも頑張ってください応援してます! (2017年10月28日 11時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます!これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです!これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2016年3月10日 21時