丁:「光と影と劣等感」 ページ14
長い不登校期間を経て、ようやく保健室登校にこぎつけたわたし。
ぼんやりした頭で化学のプリントの問題を解き、柔らかな日差しの向こうからは活発に動く生徒たちの声が聞こえてくる。その中に何度も入りたいと思い、同時に恐怖心も抱いてきた。
「あれっ?先生はいねぇのけ?」
ユニフォーム姿のダンがやって来た。たしか、ダンはサッカー部でディフェンスをやっているんだったっけ…。
「どうしたの…?」
「ちっと怪我の手当てしでもれえだがったんだげど、おめぇは誰だ?見かけねえ顔だな。どごのクラスだ?」
「A。たしか一緒のクラスだった、と思う。」
クラスメイトと話をすることなんてないから緊張する。
「ああ!思い出したっぺ!Aか。なして学校さ来ながった?」
「うん、まあ…いろいろあって。」
「いろいろって、なしたんだ?」
「だから…学校に来るのが嫌だったんだよ。人に合わせるのもつらくて、居場所がどこにもなくて。それに劣等感もひどいし、今も学校にいるだけで怖いよ。」
不思議だ。ろくに話したこともないダンにここまで自分の気持ちをさらけ出せるなんて。
「うーん…劣等感っつうのは誰かとの比較だがら感じるもんじゃねえげ?自分で自分を認めねえがらそうなるんだっぺ。」
真面目な顔をして、わたしを真っ直ぐ見つめている。その顔がなんだか少し怖くて。
「もぢろん周りの人間がすごすぎたらどうしでも劣等感を感じるもんだし、その環境に耐えられなぐなっちまうごどもある。しでも、ほがの奴らも初めがらそうでなかったはずだ。もしかしたら今のAと同じように劣等感を感じながら、辛い毎日を過ごしでだがもしんねえ。」
保健室の先生よりも言うことがすごくて。
「どんな奴にも本当は光と影があんのに、光の当たってる部分しが見ねえのはおがしな話だっぺ。」
反論する余地もない。だってすべて本当のことなのだから。
「なぁA。劣等感にとらわれるっちゅうごどは、何もできねえど思い込んでるごどと同じなんだぞ?」
「そんなこと言ったって…。」
「まず今のA自身が出来るごど、出来ねえごど、良い所、悪い所…みんなじっくり考えたらいんでねの?それまではきっとこごがAの居場所なんだっぺ!」
光しか見えないようなダンだけど、本当はわたしと同じだったのかもしれない。
そう思えた。
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね!これからも頑張ってください応援してます! (2017年10月28日 11時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます!これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです!これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2016年3月10日 21時