普：「グラウンドの告白」 ページ11
わたしが所属していた陸上部には、入部当初から一人だけいけ好かない奴がいた。
「A！俺様とシャトルランでどこまでやれるか勝負しようぜ！」
「うるさい。一人でインターバル走でもやってろ。」
「Aが辛辣すぎて悲しすギルぜー…ケセセ……。」
ジャージの裾を何重にも折り畳み、変てこな格言Ｔシャツといういで立ちのギルベルトは、いつもこうしてわたしに絡んできた。
特に夏の合宿ではしつこかったのを覚えている。
「大丈夫かよ…A、さっきも吐いてたじゃねーか。」
「大丈夫だよ。ちょっと休めばまた走れるから…。」
みんなについて行くのが精一杯で、夏の競技場の炎天下で何度吐いたかわからない。そんな中でもギルベルトはわたしから離れなくて。
「Aには特別に俺様特製のゲロ袋を貸してやるよ！」
「せめてエチケット袋って言ってよ…。」
きつい合宿が終わっても、膝を壊した時も、賞状をもらった時もギルベルトは必ずわたしに歩み寄ってきた。
わたしは陸上部の活動に専念したかったのに、ギルベルトという邪魔な存在ができてどれほど腹が立っただろう？
一度は陸上部を退部することも考えたほど追い詰められて、それでも辞められなくて３年間続けて、ようやく卒業する頃に気付いてしまった。
“ギルベルトはいつもわたしの側にいてくれた”
“わたしもいつもギルベルトを気にしていた”
わたしは、本当は…本当は…。
「ギルベルト。」
「何だ？」
制服でグラウンドに立ち尽くすわたしたち。
あんなに憎たらしかったグラウンドの砂ぼこりも、炎天下の蒸し暑さも、みんなの掛け声も、今では大好きだったということに気付く。
そして。
「ずっとわたしを支えてくれてありがとう。」
本当はギルベルトが好きだった。
いつだってそう。その時は楽しいことに気が付かなくて、それが終わったあとにようやく気付く。
「どうでもいい奴を支えるバカがどこにいると思ってんだよ。」
「そうだね。それに気が付かないのもどうかしてた。」
「Aは俺様にとって最高の仲間で、最高の女だったぜ。」
「ギルベルトこそ最高だったよ。本当にありがとう…。」
澄み渡る青空の下。グラウンドにはずっと、優しい風が吹き続けていた。
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね！これからも頑張ってください応援してます！ (2017年10月28日 11時) (
レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます！これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです！これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スノーデイ | 作成日時：2016年3月10日 21時
