英:「This is a pen.」 ページ1
資料ばかりで狭苦しい生徒会室は今日も相変わらずで。
「A、まだそんな汚ったねえシャーペン使ってるのか。」
生徒会長のアーサーは書記のわたしに毎日こうして意地悪なことを言って干渉する。わたしは『またか…』と思いつつ溜め息をついた。
「まあAが気に入って使ってるならいいさ。そのうち指まで汚くなるだろうけどな。」
「うるさいなあ!わたしがこういう役目なのは知ってるくせに。」
書記なのだから書くのが仕事だ。現に今も生徒会新聞を書いている最中で、だからペンも手も、そして指も汚れるのは仕方ないことなのに。
「安物を使うのは良くないぞ。買う時には品質を確かめてから買え。」
「べつにわたしがどんなペンを使ってたっていいでしょ?さっきからしつこい。」
「だから買う時は文房具メーカーを調べてフィット感や利便性を確かめてから買えって言ってんだよ、ばか。」
「アーサーって生徒会長で勉強できるだけあって上手だよね。空っぽな理屈をこねることが。」
チッ、というアーサーの舌打ちが争議開始の合図。
「だいたいAはな、書記のくせして配慮が足りねえんだよ!」
「そっちこそ生徒会長のくせにその偉そうな態度はどうかと思うんだけど!」
「何だよ!」
「何よ!」
いつもこう。お互い生徒会に所属していても、くだらないことで言い合いになってばかり。
本当は素直に意見を受け入れればいいだけなのに、お互いにぶつかり合うことでしか向き合えないのがちょっぴり悲しい。
だってわたしは…。
「もういい。Aがそういう奴なのは知ってたさ。」
アーサーが溜め息をつき、目の前に乱暴な手つきで置いたのは綺麗に包装された細長い箱。
「何これ?」
「開ければわかる。」
今まで素直に向き合えなかったくせに、こういう時はお互い黙ってしまうのはなぜなのか。
「これって…。」
「そうだよ、見りゃわかるだろ。」
まさかアーサーに言わせるわけにもいかないだろう。
“This is a pen.”と。
「本当は知ってたさ。Aがいつも精一杯書記をやってくれてるのは。でもAに汚れた手は似合わないぞ。」
素直になれないのはわたしも同じ。
「ありがとう。わたしもアーサーが生徒会長としていろんなところに気を配ってるのは知ってるよ。ひどいこと言ってごめんね。」
「まあ、わかってるなら許してやるよ。」
素直になれないけれど、わたしはアーサーのそんなところが大好きだ。
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桜葉 - スノーデイさんの小説はどれも素敵ですね!これからも頑張ってください応援してます! (2017年10月28日 11時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ショコラさん» ありがとうございます!これからもそう言っていただけるように頑張ります。 (2016年4月28日 14時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
ショコラ - スノーデイさんの小説はどれも素敵で読みやすいです!これからも応援しています!(*^_^*) (2016年4月26日 20時) (レス) id: 8dc6dca93f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - ルネさん» ありがとうございます。しかしわたしはまだまだなのでもっと読みやすい文章が書けるように努力します。 (2016年4月1日 23時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
ルネ - 文章全てが綺麗でわぁ青春だなぁと思えるようなものばかりで素敵です。 (2016年4月1日 20時) (レス) id: 97fe96e6af (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2016年3月10日 21時