第19夜「平和な夢」 ページ19
ノーレに言われた通り、適当に何かを取って中へ入る。
まるで滑り台を滑るような感覚で入ったその世界では、あたり一面が砂浜と海と、そして夜明け前の美しい空があった。
砂浜は茶色いけれど、海の色は七色に光り、空には白い虹。
「すごく綺麗なところ……。」
「これはAの夢だよ。」
イースはいつの間にか隣にぴったり寄り添っていて、ノーレはわたしが木から取ったものを大事そうに抱えていた。
「それ、小さい頃に持ってたものだ。」
「んだな。Aの大事なもんだべ?」
ノーレの手には白くて小さな貝殻。
「なつかしいなぁ。小さい頃、家族で海に行ったことがあってさ。そこでそれを見つけたの。しばらく大事に取ってあったんだけど、床に落として割れちゃってね…次の日には親にゴミへ出されたよ。」
それがこうして今、わたしの前にある。
それを見て思い出されるのは、楽しかったあの頃。
「この貝殻はもう一度Aに会いたくて戻ってきたんだと思う。」
「Aは何でも大事にする子供だったはんで…。」
あの時、あんなに楽しかった毎日が今ではつらく虚しいものにしか感じられなくなった。
いつからこうして内向的になり、どこからこんなふうに変わってしまったのか。
子供の頃はもっと無邪気で、明るくて、楽しくて…。
「Aは綺麗で、穏やかで平和なものが好きなんだね。この世界を見れば僕にはわかるよ。」
「んだ。Aほど平和を愛するもんがこの世にいるべか?」
「そんな…。わたしは……」
みるみるうちに世界が遠ざかっていく。
また暗闇の世界に元通り。
「わたしは、平和なんてただの夢だと思ってるから。」
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匿名 - すごく良かったです。表現が綺麗で引き込まれました (2021年9月26日 5時) (レス) @page30 id: 08e03ad312 (このIDを非表示/違反報告)
諷加 - すごくいい作品でしたスノーデイさんの小説はほとんど読んだけどどれも素敵ですね応援してます! (2017年11月28日 16時) (レス) id: e19bf62fb6 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶 - すっっっっごくいい作品ですっ!一発でファンになれます!これからも頑張って下さいね!(*≧∀≦*) (2017年4月25日 6時) (レス) id: ccfee82074 (このIDを非表示/違反報告)
ハル - 世界観がたまらんっ! (2017年4月16日 10時) (レス) id: db5660f2cb (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - リンアさん» 閲覧ありがとうございます。わたしは書きたいものを思いついたままに適当に書いていることが多いのですが、それでもそう言っていただけるととても励みになります。コメントありがとうございました。 (2016年4月5日 0時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2015年7月21日 13時