第44話「愛してるから」 ページ46
時の流れには逆らえず、とうとう120年目を迎えてしまった。
アーサーの体はもう持たない。
「A、菊。実は俺から二人にプレゼントがあるんだよ。」
アーサーがわたしたちに贈ってくれたのは、文明がなくなった地球で作るのは不可能と思われていたタイムマシン。
「アーサーさん、まさか蘇った時からずっとこれを作っていたんですか?」
これで過去へ戻って暮らすことができる。
「もっとびっくりさせてやる。これはただのタイムマシンじゃないぞ。過去へも未来へも地球という惑星の時間を丸ごと操れるタイムマシンさ。」
でも。
「俺の技術ではこれが精一杯さ。このタイムマシンは二人乗り…Aと菊が乗るものだ。」
嘘……。
「たとえ乗っても俺はいずれ死ぬ。もともと、このために俺は生かされたようなものだし、寿命に間に合ってよかった…」
「嫌だ!わたし乗らない!こんなのやだよ。みんな幸せになれなきゃ意味がない!」
アーサーだけ置いてタイムマシンに乗るなんてわたしにはできない。
「トニーのヤツに言われたんだよ。俺を蘇らせたのは世界のためだってな。すべてには理由があったんだ。」
何もかもがアーサーの復活に隠されていたのか。
「頼むから菊と一緒に乗ってくれよ。もちろん、これも忘れずにな。」
幾度もの大戦を生き抜いてカードが滲んで見えた。
「俺はここに残って地球を守る。」
「だって、だってアーサーは…」
「大丈夫だ、わかってる。たしかに俺には時間がない。だけどそれが何だ!俺はアーサーである前に“イギリス”だ!痩せても枯れても大英帝国の意地と誇りは見失っちゃいないさ。」
「アーサー…ありがとう。本当にありがとう。」
「ありがとうございます。」
菊と一緒に頭を下げる。
タイムマシンから見えるアーサーの姿は凛としていた。その姿は初めての大戦で見た時のような勇ましい姿。
「菊。俺の代わりにAのこと、頼んだぞ。」
「はい。天地神明に誓ってAさんをお守りします。」
菊が操作を開始した。
「わたし、アーサーがいつもわたしを想ってくれてるの、わかってたよ。愛してる…」
この時が初めてかもしれない。わたしからアーサーにキスをしたのは。
「俺も愛してる。だからAは菊と生きろ。時代を変えられるまで。」
タイムマシンがフワッと浮かび、一瞬で空の彼方まで飛び立ったのを見届けたアーサー。
「A…頑張れ……よ…………。」
43人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ヘタリア」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スノーデイ(プロフ) - 私は日領こと露領(靴下)こと世界領((←さん» ありがとうございます。今は“まだ”ですがそのうちどうなるかと思うと怖いですよね。戦争を起こさないためにはどうしたら良いのかを考える切っ掛けになったのなら嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2016年2月22日 21時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
私は日領こと露領(靴下)こと世界領((← - とても感動しました。戦争という事についてとても深く考えさせられる、とても素晴らしい作品でした。今は “ まだ ” 起きていない第三次世界対戦や第四次世界対戦、第五次世界対戦など、戦争について改めて一から考える切っ掛けとなりました。有り難うございました。 (2016年2月22日 20時) (レス) id: d4b1972073 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - にゃん。さん» 閲覧ありがとうございます。でも全然素晴らしくなんかないですよ。考察とかけっこう曖昧なところがあるので。それでもこうして丁寧なコメントを下さって本当に嬉しいです。これからも頑張ります。 (2015年12月17日 19時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん。 - 小説、全て読ませていただきました。戦争という難しい、そして悲しいテーマでこれほどまで素晴らしい小説を書かれたことに非常に感動しました。それはもう思わず涙を流してしまうほどには。素敵な作品を本当にありがとうございました。これからも楽しみに待っています (2015年12月13日 14時) (レス) id: 3296dfbe0f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - あかいそらさん» コメントありがとうございます!これからも感動してもらえるような作品が書けるように頑張ります! (2015年5月9日 2時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:スノーデイ | 作成日時:2015年3月26日 23時