第32話「ルートの思い出」 ページ34
ドイツ・ベルリン。
ベルリン上空は分厚い雲が覆い尽くし、街は少し冷たく湿った空気に包まれていた。
「おいルート。」
「何だ兄さん。」
「俺らマジでどうなるんだよ?」
「決まってるだろう。どうせ悪者にされるだけだ。」
「お前まだそれ言ってんのか…」
ルートは何度もの大戦で悪者にされたことを未だに根に持っている。市民の生活を守りたくて頑張った結果が悪者扱いなんだから、これではルートが報われない。
「ケセセッ。もし俺たちが戦争に参加したら、ガチでいろいろヤバくね?」
「一応コンピューターの精鋭を動員するとしても戦況は厳しいものになるだろうな。」
前は人間とコンピューターの戦いだったけど、今回はコンピューター同士の戦いになることもあり得る。
コンピューターは人間の代理として駆り出されるかもしれない。
そうなれば、いわば“代理戦争”とでも言うべきか。
「こんなことになるなら、いっそ国境なんてベルリンの壁を崩した時のようになくしちまえばいいのにな!そしたらどの国の連中も仲良くやれるかもしれねーのに、大陸に線を引くこと自体間違ってんだよ。」
ギルベルトが思い出すのは歴史上で最も有名な壁ドンであるベルリンの壁崩壊。
あの時はドイツ国民が一丸となった記念すべき日。
「またあの聖夜の奇跡のように、どの国の人間も分かり合えたらいいものを…。」
ルートは思い出す。
遠い過去の思い出…第一次世界大戦の時、イギリス軍とのにらみ合いの最中に“きよしこの夜”を歌ったおかげで、両軍は停戦をしてサッカーをして遊んだ聖夜の奇跡。
あの奇跡は二度と起こらなかったけど、何かの拍子にまた起きてくれたらと、ルートはそんな夢物語を抱いていた。
「Aはどうしてるだろうな。」
ギルベルトがぽつりと呟く。
「Aは菊が守ってくれるはずだ。俺は二人が戦禍をくぐり抜けられることを期待する。」
それが今のルートにできる精一杯の思いやり。
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スノーデイ(プロフ) - 私は日領こと露領(靴下)こと世界領((←さん» ありがとうございます。今は“まだ”ですがそのうちどうなるかと思うと怖いですよね。戦争を起こさないためにはどうしたら良いのかを考える切っ掛けになったのなら嬉しいです。コメントありがとうございました。 (2016年2月22日 21時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
私は日領こと露領(靴下)こと世界領((← - とても感動しました。戦争という事についてとても深く考えさせられる、とても素晴らしい作品でした。今は “ まだ ” 起きていない第三次世界対戦や第四次世界対戦、第五次世界対戦など、戦争について改めて一から考える切っ掛けとなりました。有り難うございました。 (2016年2月22日 20時) (レス) id: d4b1972073 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - にゃん。さん» 閲覧ありがとうございます。でも全然素晴らしくなんかないですよ。考察とかけっこう曖昧なところがあるので。それでもこうして丁寧なコメントを下さって本当に嬉しいです。これからも頑張ります。 (2015年12月17日 19時) (レス) id: cb443af24c (このIDを非表示/違反報告)
にゃん。 - 小説、全て読ませていただきました。戦争という難しい、そして悲しいテーマでこれほどまで素晴らしい小説を書かれたことに非常に感動しました。それはもう思わず涙を流してしまうほどには。素敵な作品を本当にありがとうございました。これからも楽しみに待っています (2015年12月13日 14時) (レス) id: 3296dfbe0f (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - あかいそらさん» コメントありがとうございます!これからも感動してもらえるような作品が書けるように頑張ります! (2015年5月9日 2時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:スノーデイ | 作成日時:2015年3月26日 23時