【APH】 第五次世界大戦 〜時代は巡る〜 【ヘタリア】

第15話「悲しい姉弟」 ページ17

その頃のロシア西部では、ちょっとした小競り合いが起きていた。


小競り合いと言っても、それほどたいしたものではないけれど。


「みんなでディナーを一緒にするなんて、何年ぶりかしらね。」


長いこと気苦労が絶えないウク姉はすいぶん痩せた。とても苦労をした証。でもその巨乳は健在なんだよなぁ…。


「昔からずっとこうだったじゃない。僕たちはいつも別々の道を歩んで来たんだから。」


だから一緒にディナーをすること自体が珍しいのだとイヴァンは言う。


「私、嬉しいわ。兄さんと勝利の日に食事ができるなんて。」


イヴァンに結婚を迫ることで有名なナタ嬢は、ゆっくりとイヴァンに寄り添い、その背中に“День победы”と指で書く。


ロシア語でロシアの祝日である『勝利の日』を書かれたイヴァンは、その邪気を払うように水を飲み、体をぶるりと震わせる。


「 勝利の日の後はロシアの日 が待ってるし、11月4日には民族統一の日がある。その時は私も一緒に統一してくれたら…」

「ナターリャちゃん。そんな話、簡単にするものじゃないわ。」


今、国同士の話題はデリケートになっているから。


「お前に兄さんは渡さない！さあ兄さん、結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚結婚…」

「帰ってえええぇぇぇええええ!!」


その様子にウク姉はため息が出る。


「私、どんなに周りに反対されても、必ず昔みたいにみんなで幸せになれるって信じてた。」


そしてどんな争いの中でも、自分を守るためにイヴァンは迎えに来てくれるって、ウク姉は信じてた。


「ナターリャちゃん、帰ろう。」

「姉さん、もう帰るの？僕もまだ姉さんと話したいことがあるのに。」


玄関まで行くウク姉をイヴァンは追う。その光景は寂しい。


「ねぇ、イヴァンちゃん…。私たち、また助け合えるかな？」

「姉さん……」


暗い玄関。悲しい姉弟。


「ごめんね。変なこと聞いちゃったね。でもイヴァンちゃんは、私にとって頼りになる自慢の弟だよ。」


たとえどんな時代になってもそれは変わらない。


ウク姉に続いてイヴァンの家を出ていったナターリャ。家の中は物音ひとつ聞こえない。悲しい雰囲気の中に温かなディナーが残されているだけ。


「結局、僕は一人か……」

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