第43話「一緒に帰ろう」 ページ45
二人の勇気がそうさせたのか、山への道のりは早かった。
山奥の一軒家、ノーレの家へ辿り着いた時、イースはノックする。何年ぶりのノックだろう？
ガチャっと開かれたドアの向こうにはノーレ。
「イース…！」
「…久しぶり、ノーレ。」
ぎこちない挨拶。無理もない。何年も会っていなかったんだから。でも感動している時間はない。
「ノーレさん。今、山の麓では物騒なことに戦車が夜中からひっきりなしに走り回ってるんです。もしかしたら大きな争いが起こるかも…。ノーレさんには、みんなのいる喫茶店へ戻って来てほしいんです。」
ノーレの身に何かあってからでは遅いから。
「このままでは、ノーレさん…命の危険だってあるかもしれない。」
「ええんだ。」
え………？
「生きようが死のうが俺には関係ねぇ。元々、命を捨てる覚悟で入ぇった山だ。俺の命はねぇも同然だべ。」
バカ。ほんとバカ。
「ノーレさんはバカ！」
「A…？」
「どうせ生まれてきた命なら、まっとうさせるために戦えばいいじゃない！命を無駄にするような発言を軽々しくするもんじゃないわ！司祭のくせに！」
わたしもバカだ。
「いい？生きるっていうのはね、自らの中に巣食う暗い力と戦うってことだよ！ノーレさんはそのための剣すら握ってない。」
ノーレもイースも石の如く固まっている。
「戦いなよ！ノーレさんだけの命じゃないんだから！喫茶店では、みんながノーレさんの帰りを待ってるんだから！」
不況だろうと貧困だろうと、家族の絆は簡単に切れるものじゃないはず。
「帰って来てよ…ノーレさん。」
その時だった。
「ノーレ、Aの言う通りだよ。もう一度、みんなで暮らそうよ。」
「俺が帰ったところでおめやみんなに迷惑かけるだけだべ。」
「迷惑かける相手をわざわざ迎えに来たりなんかしないよ。僕は誤解してた。ノーレは自分だけがいい暮らしをしたいから、僕やみんなを捨てたのかと思ってた。」
「もうやめろ。俺は戻らねぇ。イース、おめだけは守りてぇんだ。」
「そういうの、もうやめようよ。」
こんなに自分を犠牲にしてばかりじゃ、どっちも幸せになれないよ。
「一緒に帰ろう。」
イースはノーレの手を取った。
なんだ、どっちも不器用なだけだった。
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スノーデイ(プロフ) - メガネさん» 返信が遅れてすみません。これは初めての作品なので、上手く出来てはいないと思っていましたがそうおっしゃっていただけて嬉しいです。ありがとうございます。 (2015年8月27日 0時) (
レス) id: ded5f9c70d (このIDを非表示/違反報告)
メガネ - 今まで読んできた完結している話の中で一番綺麗に終わっていると個人的に思いました!!とても感動的で読みやすかったです (2015年8月13日 0時) (レス) id: bdcbed7f1b (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - メーア＝シュネー＠日帝受け推奨委員会さん» спасибо！(^し^)☆ (2015年4月6日 1時) (レス) id: 34f11f5ff1 (このIDを非表示/違反報告)
メーア＝シュネー＠日帝受け推奨委員会(プロフ) - いい話だ……。 (2015年4月5日 23時) (レス) id: dcebb3bde5 (このIDを非表示/違反報告)
スノーデイ(プロフ) - 柚旗さん» コメントありがとうございます。そんなふうに言っていただけるとは思っていなかったので、こちらこそ何度もコメントを読み返して泣きそうになります(笑)読んでくださったばかりでなく、コメントまで本当にありがとうございました。 (2015年1月8日 5時) (レス) id: ded5f9c70d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：スノーデイ | 作成日時：2014年12月19日 18時
