電車で見かけた王子様3 ページ6
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どれくらい経っただろうか。ひとしきり泣いてボーッとする頭はしかし、少しだけ落ち着いていた。
「とりあえず、水分補給しよ……」
掠れる鼻声でひとりごちる。このフェンスの内側の大きな公園なら、給水機か自販機があるだろう。そう思い立って私は公園の入り口に回り込んだ。明らかに泣きはらした顔も洗ってスッキリしないと気軽に歩き回れもしない。
『柿ノ木坂テニスガーデン』と書かれた門を通り抜け、そそくさとトイレで顔を洗い、自販機を見つける。
購入したスポーツドリンクを一気に半分近く飲んでフウと一息吐くと、近くのコートが騒がしくなっていることに気がついた。
「試合、してんのかな？ 気晴らしに覗いてこっかな……」
フラリとコートに近づいてみると、驚いたことに試合をしているのは先程の少年と男子高校生だ。
「げっ、大人気ない……って、あれ？ あの子が勝ってるの？」
テニスなんてファンタジーみたいな少年漫画で知ってるくらいで全く分からないけど、少年の放った高い球はバウンドせずにラインの上にポトリと落ちる。アレは多分すごい技なんじゃなかろうか。
そんな球を何級ももらって返せず、苛立った男子高校生はいきなり、ラケットを少年の顔目掛けて──な、投げつけた……！
「ワリィワリィ、手が滑っちまった！」
「ひ、ひっど！！」
明らかにワザとだ。当の少年は怯んだ様子もなく、小生意気な態度のままボールを地面についている。肝が据わってるな……。
と思ったら、次に少年が放ったサーブが男子高校生の方へと曲がり、直撃した。
「……ん？ ツイスト、サーブ……」
知ってる技だった。ついでに言うなら、ツイストサーブを打つ前に見せた少年のあの仕草。アレも見覚えがある。あの小生意気な態度や口調も知っている。
「テ、テニスの……」
ドクン、と心臓が大きく脈打った。少年は次々とツイストサーブを打ち込み、男子高校生にお灸を据えている。男子高校生の方はついにへたり込んでしまい、ラケットで顔面を庇うようにして怯えた様子。
覚えている。それこそ中学生くらいの時、アニメや漫画をちょこちょこ見た。たしか、あの少年は主人公の天才テニスプレーヤー。
「王子、様……」
怯える男子高校生をあざ笑うように、軽く山なりに打ち込まれたボールが軽快にバウンドして、ゲームセットを告げた。
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天葉 - 凄く面白いです！よく見かけるトリップモノとはまた違った面白さを感じました。オトナな夢主に原作で大人扱いされてた子が甘やかされてるのとかキュンとしそうです！若返りで勉強が…というのがリアルで思わず笑いました。応援してます♪ (2021年3月30日 15時) (
レス) id: 623fd23513 (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - 小冬さん» 面白いと言ってもらえてとても嬉しいです！ 更新頑張ります。 (2020年10月10日 12時) (レス) id: 690c44789e (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - 飽き性で更新停滞させてすみません……書きたいエピソードたくさんあるので、またぼちぼち更新します。 (2020年10月10日 12時) (レス) id: 690c44789e (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - 久しぶりに、面白い小説に出会えたぁぁぁ！！！頑張ってください、応援してまぁす☆ (2020年10月2日 22時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - におーさん» 応援のお言葉ありがとうございます！ (2020年8月16日 11時) (レス) id: 66db041f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太田 | 作成日時：2018年3月19日 18時
