転校生と生徒会長3 ページ36
─
「ま、井上君には色々と融通してもらっているしね。それに、この子はアタシにとったって孫娘の恩人さ。なにか困ればいつでも頼っといで！」
「あはは……ありがとうございます、心強いです！」
う〜ん。ここでも、テニスか……。笑って言葉を返しながら、執念のような因縁のようなこの環境に考えを巡らせてしまう。全てがテニスに、漫画に繋がっている。
(当たり前なのかも。ここは漫画の世界なんだから)
しばしの歓談を終え、守おじさんは先生方に挨拶をして仕事へ向かい、私は始業式に参加することとなる。
先生たちの席に混ざって学園長の挨拶なんかを聞くわけなんだけど、適度にサボることもできなくてすごく気疲れする席だ。まあ、生徒に混ざれば周りの子が落ち着けないだろうからしょうがないよね……。
そんな風にぼんやりと式の運行を眺めていたら、不意に生徒たちがざわついた。
「なに……？」
浮かれたような嬉しそうな雰囲気だ。女子生徒のきゃあきゃあはしゃぐ声も少し聞こえる。そんな空気を引き連れて、壇上に一人の男子生徒が上ってきた。
──見覚えがある。あれは、青学テニス部部長の……？
「今期生徒会長の、手塚国光です」
マイクを通して拡声された、低く落ち着いた声。
──えっ、テニス部部長、だよね？ 生徒会長？
◆
「驚いたろ。文武両道、眉目秀麗で人気の生徒会長なんだぞ」
「へえ……すごいんですね」
教室へと向かう廊下を歩いている最中、私の担任の先生が教えてくれた。ちなみに先ほどの応接室に竜崎先生と一緒に来た先生で、藤原先生という。歓談中は空気を読んだのかほぼ一言も発さななかったけど、フレンドリーな先生みたいだ。
「とにかく優秀な上に、カリスマっていうのかな？ リーダーシップのある生徒でな。テニス部の部長も兼任しているんだよ。実績も多いから先生も頭が上がらないさ」
「生徒会長と部長の兼任、ですか？ そんなことできるんですね」
「そんなことができるから、優秀なんだ」
中学生とはいえ、どちらも生半可な仕事量ではないのでは？ ありえない。私は心の中でげんなりとしてしまった。漫画ってすごいね。
「ちなみに、うちのクラスの生徒だよ」
「えっ」
「ホームルームが終わったら手塚に学校の案内やらを任せることになってるから、仲良くするようにうな」
「えっ」
「よかったな〜イケメンと校内一周ツアーだぞ！」
「先生、セクハラなんですけど」
「なにっ？ 最近は厳しいなあ」
─
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 124人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天葉 - 凄く面白いです！よく見かけるトリップモノとはまた違った面白さを感じました。オトナな夢主に原作で大人扱いされてた子が甘やかされてるのとかキュンとしそうです！若返りで勉強が…というのがリアルで思わず笑いました。応援してます♪ (2021年3月30日 15時) (
レス) id: 623fd23513 (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - 小冬さん» 面白いと言ってもらえてとても嬉しいです！ 更新頑張ります。 (2020年10月10日 12時) (レス) id: 690c44789e (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - 飽き性で更新停滞させてすみません……書きたいエピソードたくさんあるので、またぼちぼち更新します。 (2020年10月10日 12時) (レス) id: 690c44789e (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - 久しぶりに、面白い小説に出会えたぁぁぁ！！！頑張ってください、応援してまぁす☆ (2020年10月2日 22時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - におーさん» 応援のお言葉ありがとうございます！ (2020年8月16日 11時) (レス) id: 66db041f0b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：太田 | 作成日時：2018年3月19日 18時
