番外編:降水確率10%2 ページ30
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中学生向けの参考書に目を通す私の後ろは、もちろん入試対策やらの学習補助教材が並んでいる書棚がある一角だ。
にも関わらず、私の真後ろで本を物色しているのは、とても学生には見えない小太りの中年男性。身に纏っているのはスーツではなく、ヨレヨレのシャツとチノパンでおよそ会社員といった風態ではない。
(ちょっと怪しいかも。移動しようかな)
少しずつにじり寄って来ている気配がして、私は参考書を戻してすこし横にずれてみる。
すると、男はピタッと私について移動してきた。こわっ。
(何……？ 早く逃げ──！！)
その場から離れようとしたとき、男の手元が視界に入って、やっと気がつく。
下ろした手にはバッグを持っていて、そのマチノ部分のポケットから小さなレンズが覗いていた。バッグは、私の真後ろ、スカートの下。
ぞわっと嫌な感じが走って、気色悪さと恐怖と、取り押さえなきゃという使命感で体が凍りついた。
私が盗撮に気付いたことに、男も気が付いたのかもしれない。私に背を向けていたのを向き直り、さらにグッと距離を詰めてきた。
どこも触れられてはいないが、後頭部や耳の後ろに生温かい鼻息が当たっている。キモい。怖い。
「は、……離れて」
いけない、声が震えた。すぐ後ろで、息が当たるほど近くに変質者がいるという恐怖。力では叶わなそうな男。弱みを見せるくらいなら、何も言わず強行突破で振り切ればよかった。
激しく後悔した私を、怯えて縮こまっていると判断したのか、男はその小太りの体を私の後ろに擦り付けてきた。
「やめ……」
「何をしている？」
涼やかな声が、降ってきた。
「ﾋｯ」
「痴漢行為は迷惑防止条例……やりようによっては強制わいせつ罪に該当するそうだな。みっともない真似はやめておけ。もっとも、もう遅いが」
スタスタと近寄ってきて、ガッチリと男の肩を掴んだのは、背の高い、糸目？ の青年だった。制服を着ているから高校生くらいだろうか。
落ち着き払った様子にそのガタイの迫力で、痴漢男は怯え切って逃げようとしている。
「暴れても無駄だ。この俺相手にお前が逃げられる確率は8%といったところだな」
(か、確率だあ？)
澄まし顔で放たれた言葉に、私は青年を二度見した。彼は気にした様子もなく、奇声を上げて暴れる痴漢男を取り押さえている。
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天葉 - 凄く面白いです！よく見かけるトリップモノとはまた違った面白さを感じました。オトナな夢主に原作で大人扱いされてた子が甘やかされてるのとかキュンとしそうです！若返りで勉強が…というのがリアルで思わず笑いました。応援してます♪ (2021年3月30日 15時) (
レス) id: 623fd23513 (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - 小冬さん» 面白いと言ってもらえてとても嬉しいです！ 更新頑張ります。 (2020年10月10日 12時) (レス) id: 690c44789e (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - 飽き性で更新停滞させてすみません……書きたいエピソードたくさんあるので、またぼちぼち更新します。 (2020年10月10日 12時) (レス) id: 690c44789e (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - 久しぶりに、面白い小説に出会えたぁぁぁ！！！頑張ってください、応援してまぁす☆ (2020年10月2日 22時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - におーさん» 応援のお言葉ありがとうございます！ (2020年8月16日 11時) (レス) id: 66db041f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太田 | 作成日時：2018年3月19日 18時
