理想の子供5 ページ28
─
「……井上、さ……、」
ふと、思い当たった。
私のためにこれほど覚悟を決めてくれた彼に、庇護される私だって応える義務がある。
覚悟を決めろ──
「ま、……守おじさん。……ありがとう」
「！」
形から入ることが大事なステップだと思った。
何せ私たちはお互い、打算まみれの人付き合いに慣れ切ってしまった大人だ。相手と、なりたい関係が明確にあるのなら、打つ手はある。『仲良しの親戚』の形では、子供は敬語も苗字にさん付け呼びもしないものでしょうと。
そうして『仲良しになる努力』を口に出してみた私は、多少の気恥ずかしさと緊張を振り切って、おずおずと顔を上げてみる。
パチッと目が合った彼は、予想だにしなかった出来事に驚いた顔でぱちくりと目を瞬かせてこちらを見ていた。
驚かれると、恥ずかしい気持ちが倍になるんですけど……。
「だ、だめ……かな」
「いや！ だめでは、決してダメではない！ 嬉しいよ。君も努力してくれるってことだろ。ありがとう、Aちゃん」
「…………」
「…………？」
慌てて否定した守おじさんは、言葉の通りの嬉しいような気恥ずかしいような顔ではにかんで頭をかいた。
でももうひとつ踏み出せることがあるよね。要望を込めてじっと見つめる。言わせてくれるなよ。
無言の圧力を、彼は正しく理解したようだった。
「ゴホン。…………ええと。……ありがとう、A」
「っ、こ、こちらこそ」
「はは……。早く慣れないとな」
「……だね、あはは」
私も守おじさんも、決してやりたくてこんな……付き合い始めのウブなカップルみたいなやりとりをしてるわけではないからね！
誰が見てるわけでもないのに言い訳のような思考を巡らせて、この生暖かい空気を早いところ無視しようと気を強く持つ。
痒いくらいの気恥ずかしさをふたりで耐え、私たちは立派な仲良し家族への道を一歩踏み出した。
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天葉 - 凄く面白いです！よく見かけるトリップモノとはまた違った面白さを感じました。オトナな夢主に原作で大人扱いされてた子が甘やかされてるのとかキュンとしそうです！若返りで勉強が…というのがリアルで思わず笑いました。応援してます♪ (2021年3月30日 15時) (
レス) id: 623fd23513 (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - 小冬さん» 面白いと言ってもらえてとても嬉しいです！ 更新頑張ります。 (2020年10月10日 12時) (レス) id: 690c44789e (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - 飽き性で更新停滞させてすみません……書きたいエピソードたくさんあるので、またぼちぼち更新します。 (2020年10月10日 12時) (レス) id: 690c44789e (このIDを非表示/違反報告)
小冬 - 久しぶりに、面白い小説に出会えたぁぁぁ！！！頑張ってください、応援してまぁす☆ (2020年10月2日 22時) (レス) id: b394ae1541 (このIDを非表示/違反報告)
太田(プロフ) - におーさん» 応援のお言葉ありがとうございます！ (2020年8月16日 11時) (レス) id: 66db041f0b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：太田 | 作成日時：2018年3月19日 18時
