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洋服屋を出たあたりから何となくそうではないかと思っていたが やはり間違いないようだ。
松本の車の2、3台後方を走る一台の車両。
”つけられてるな…”
サービスエリアを出るタイミングが同じだったことで確信を持った。
まぁ 大方 大野の会社関係の何かだろうとの見当はついた。
チラリと助手席の大野に視線を向けたが 特に気がついてはなさそうだ。
彼の立場を考えれば 誰にも邪魔されず普通にお付き合いをする…というわけにはいかないだろうとは当然思っていた。
しかし 実際こうやって追跡なんかされてしまうと イラッとすることこの上ない。
松本は インターを降りて一般道に出ると なるべく複雑な経路を辿り 一旦は追跡車を撒くことに成功した。
間髪入れず駅近くのコインパーキングに車を駐車する。
「智 スマホ置いて 速攻降りろ。今日はもう仕事いいんだろ？」
「え？…ああ…」
大野は言われたままにスマホを置いて車を降りた。
「すいません…二宮さん 見失ってしまいました」
「ちょっと近づきすぎましたね…」
「…こういうの 慣れてないもので…」
「当然です…。城島さんのせいではありませんよ」
大野のスマホの位置情報は 駅近くの最寄りのコインパーキングで途絶えてしまった。
おそらく既に二人はタクシーにでも乗り換えてその場を離れていることだろう。
「…行きそうなところを目星つけて探してみますか？」
「…いえ…もう帰りましょう…刑事じゃないんだから そこまでする必要はないですよ…もう勝手にしたらいいんです…」
大野がいくら松本に溺れようが この業界のブラックリストにあの男の名前がある限り 採用することはないのだから。
もし問題になれば 素行の悪い松本にそそのかされたと言えばいい。
いや いっその事 問題になって そして早くあの男と縁が切れたらいいのだ…
二宮は 無表情のまま拳をグッと握りしめた。
「城島さん 慣れないことして疲れたでしょう。帰りは私が運転しますよ…」
「いえ…私は 大丈夫ですよ…二宮さんこそ…」
「オレの言うことを聞け!!!!」
突然 二宮が大声で怒鳴り出した。
両腕で”ダン!!”と大きな音を立てて ダッシュボードを殴りつけるとそのまま頭を突っ伏した。
「………に…二宮さん……」
城島は 初めて見る二宮の奇行に目を丸くして 固まっている。
しばらくしてゆっくりと顔をあげた二宮は
「…すいません…」
と消えそうな声でポツリと呟いた。
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作者名：hikari | 作成日時：2020年6月6日 4時
