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助手席というのはこんなにも眺めが良いものなのか…
大野は運転をする松本にすっかり魅了されていた。
それとも運転姿というのは皆カッコイイものなのか…？
いつも助手席に座る二宮は 城島の運転する姿を見て”カッコイイ”と見とれているのだろうか…
松本が動く度にフワリといい香りが鼻を掠める。
甘く…でも爽やかなその香りは 松本によく似合っていた。
「潤くん いい匂い…」
「ん？…ああ…休みの時だけちょっとつけてる。 ホラ 一応 料理人の端くれだから そこはね…」
そう言って 謙遜しながら照れ笑いする姿にまたやられる。
自分も身だしなみ程度に香水をつけているが 両親からの海外土産という いつもの流れだ。
好んでつけてるわけではない。
「ところでさぁ……着替えとか持ってきてないの？」
「え？…な…何か変か？」
「今日 ずっとスーツでいるつもり？」
そうなのだ…仕事場から直接飛んできた大野は ビジネススーツ姿のままであった。
正直 舞い上がりすぎて そこまで考えていなかった…というか…
恋人同士なら まず 何を着ていこうかとオシャレに気を使うのが普通なのだろうが デート初心者の大野がそんなことに気が回るはずもなかった。
「智の スーツ姿 そそられるけど 今日はもうちょっとカジュアルな方がいいかな…」
そそられると言われ我知らず胸がドキドキと高なる。
”そそられるって そういう意味だよな…”
松本は そういうことをサラりと言うので心臓に悪い。
着替えをしに一度自宅に寄るかと聞かれたが 大野はスグに返事ができないでいた。
帰ったところで松本のセンスに釣り合う私服なんて一枚もない。
全て親の息のかかった物ばかりだし 自分で買うほどファッションに関心もなかった。
どうしたものかと途方に暮れていると そんな大野の様子を見かねた松本が
「じゃあ…一緒に買いに行くか」
と 助け舟を出してくれた。
そんなこんなで最初の目的地は彼の行きつけのアパレルショップとなった。
大野の好みそうな落ち着いた外観の店をセレクトすると 若干 腰が引き気味の大野の手を取り半ば無理やり中へと連れ込まれる。
当然 松本が選んでくれるとばかり思っていた大野は ここへ来て突然”自分で選べ”と突き放される。
選べと言われても…
大野は綺麗に畳まれた洋服を崩すことを躊躇し ただただ眺めることしかできなかった。
「じゅ…潤くん…オレ…こういうのわかんないよ…」
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作者名：hikari | 作成日時：2020年6月6日 4時
