どうやら社長解放されたようです (ページ33)

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基本ビジネス脳の大野ゆえ仕方の無いことなのだがこの状態で恋愛ごとに突入されても先は見えている。
櫻井は飲みかけのグラスをカウンターテーブルに静かに置くと大野の方へ少しだけ体を向けた。

「恋愛で失敗したくないなら焦らないことが一番ですよ」

「そっ…そうなのか？と言うと？」

「初めてのデートで体を求められても簡単に委ねない。男は時に欲望が暴走してしまう生き物ですからね。異性以上に求め合うことだってあります。それを理性で止められるかどうかです」

「あ～…なんか…わかる気がする…」

松本に初めてキスされたことを思い出し大野の顔が花が咲いたようにポッと赤らむ。

「…そういう表情も見せない方がいいかな…」

櫻井は小さな声でボソリとつぶやいた。

「ん？なんだ？」

「いえ…とにかく… 最初のデートはお互いのことを知るために時間を費やして健全に楽しく過ごせばいいと思いますよ」

「楽しく過ごすか…そうだな！言われてみれば彼も”焦ることはない”と言っていたし… 深く考えないで楽しんで来るぞ櫻井！」

「……と…ご友人にお伝えください」

「へっ…!?ああ…そっ…そうだな…そう伝えよう！」

”いかんいかん…忘れてた…これは友人の話だった…気をつけろ～智！”

とはいえ結局その後も ”大野”なんだか”友人”なんだか設定が曖昧なまま饒舌に語りつくした大野は上機嫌のうちに帰途についた。
櫻井は大野の車が見えなくなるまで見送るとおもむろに携帯を取り出し画面をタップする。
耳元で無機質に繰り返す幾度かのコールの後目当ての人物に繋がった。

『…もしもし…』

迷惑そうな覇気のないその声に思わず吹き出しそうになりながらもなんとか堪える。

『…お休みのところ申し訳ない。任務が完了しましたのでそのご報告を…』

『…そういうのメールでいいんで…』

「二宮さんの声が聞けるチャンスなんで…」

『………お忙しいところ無理を言ってスイマセン…』

「いえ…私も久しぶりに楽しい時間を過ごしましたから」

大野から明日のスケジュールの変更をしつこく言われ ”松本潤”との逢瀬の時間を作ろうとしていることは傍から見ても明らかだった。
(本人はバレていないと思っているが)

二人の関係を二宮が快く思っていないことを知っている大野が繋がってくるとは考えられない。
そこでおそらく白羽の矢が立つであろう櫻井を通して自分の言葉を伝えたのであった。