どうやら社長解放されたようです (ページ29)

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松本の言葉に勢いよく顔をあげつぶらな瞳をキラキラさせる。
反応がいちいち可愛くて松本は”フッ”と笑みを浮かべた。

「まぁ…気になってはいるけど…この気持ちの正体が何なのか正直わかんねぇ…」

その言葉に大野も静かに頷いた。

早急に関係を深めるほど若い年齢でもない。
過去そのようにして壊れた経験も少なからずあった。
本当なら交わることのない線と線。
松本は慎重に考えていた。

「あの時みたいに無理やり”既成事実”をつくっちゃうとか？」

「…人の傷をえぐるな…」

「時にはそうやって強引に推し進めることだって必要なんじゃないのか？」

”経営の鬼” 大野が大野らしいことを言ってのける。
理にかなってはいるがそういうことではないのだ。

「言ってることはわかるけど結果こうやってお互い悩んでんだろう？」

「…む…そっ…そうか…」

「…とにかくオレも大野さんも仕事とプライベートはしっかりわけよう。周りに迷惑かけると会えなくなるかもしれないし。 …焦ることはないよ」

そう言われて大野はふと二宮の顔が頭に浮かんだ。

「そうだな…ウチにもうるさいヤツがいるんだった…」

”もう既に会うなって言われてるけど…”
そのことはあえて松本には伝えない。

「でも…じゃあ…どうしたらいいんだ…？」

焦るなと言われてもそれならどうやってこの関係を進めていけばいいのか恋愛に疎い大野には皆目見当がつかなかった。
松本は少し大袈裟なパフォーマンスで考える素振りを見せる。

「ん～…そうだな…とりあえず……………デートでもしちゃう？」

「でっでっデート!?」

大野の表情がパっと輝いた。

「…あ～でもオレ店の定休日平日だからなぁ…大野さん平日仕事だろ？」

「そっそんなものどうとでもなる!! オレは社長だぞ！」

言ってハッと気づく。
恐る恐る松本の顔を見ると案の定無表情で大野を睨んでいた。

「し…仕事は…キチンと…します…」

「…それでよし…」

松本に頭を優しくポンポンとされ大野は年甲斐もなく胸がときめいてしまった。

ついさっきまで不安な気持ちで松本のマンションの前で待っていたというのに今はこんなにも満たされている。
全く違う世界に来たのではないかと錯覚してしまいそうなほどに。

その後無事デートの約束を成立させた二人はお互いの連絡先を交換しあった。
大野は携帯に”松本潤”と書き込める幸せを噛み締めていた。