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「なっ!!!!セッ!!!!?」
大野の表情が面白いくらいに歪んだ。
小鼻をピクピクとさせながら 慌てふためいている。
…この様子だと何もなかったのだろうと捉えた二宮は 少しだけホッとする。
”そりゃそうか…”
いくら”松本潤”とて そんなに見境なく手を出す奴ではないか…
と 思った矢先…
「そんな ハッ！ハレンチなことするか!!きっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっっ キスだけだ!!バカ！」
「!?」
「……アッ！」
大野が慌てて 両手で口を押さえる。
しかし 時すでに遅し。
二宮の眼鏡の奥がキラリと光った。
「…社長…あの男に会うことは……絶対に許しませんよ…」
「くっそ バカニノ！…あんなこと言うから」
あんなこと言うから つい口を滑らせてしまった。
……バカは 自分だ…
こんなことなら 許可を取ろうなんて考えるんじゃなかった。
そう 今までのように 自分が思ったままに動けば良かったんだ。
そう決意した大野の行動は早かった。
店の方に行けば 二ノに気づかれて連れ戻される恐れがある。
となれば…あそこしかないだろ…
大野は資料を頼りに その夜 松本の”本丸”に乗り込んだ。
「……居ない……」
ここで間違いないはずだよなと 資料に書いてある住所を何度も見直す。
”オラージュ”から一駅ほど離れた場所にある 松本のマンション。
エントランスのインターホンを何度押してもなんの応答もない。
閉店時間を考えて もう帰宅しているだろう時間を見計らって来たというのに…。
居留守をつかっているのか はたまた 相葉と飲みにでも行っているのか…
人のことを散々悩ませておいて もし後者だとしたら いいご身分だなと 大野は勝手に腹を立てていた。
このままエントランスにいて不審がられても困るので 一旦 外へ出て待機をすることにした。
少し肌寒くなってきた風をよけられそうな壁にトスンと寄りかかり 大野はフウっと深いため息をつく。
思えばこの一ヶ月 ほとんど何も手につかない 抜け殻のような状態であったのだが 何故か不思議と 気持だけはフワフワと熱に侵された感覚があった。
松本の一ヶ月はどうだったのだろうか…。
いつも通り 何も変わらない一日 一日を過ごしたのだろうか…
あのキスは 松本にとっては 何の意味も持っていないのかもしれない…
そう考えると 鼻の奥がツンとする感じがした。
「…大野さん……？」
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作者名：hikari | 作成日時：2020年6月6日 4時
