どうやら社長解放されたようです (ページ3)

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とにかく全てがが完璧だった。
あの”首切りの大野”が何も言えないくらいの仕事ぶりだった。

行き届いた掃除から始まりサービスの向上接客教育無駄のない空間プロデュースそして従業員の信頼をもこの短期間で獲得していた。
何よりもこの男大野の思考をよく理解しそれを上手く活かしている。
よくこのような人材を引き抜いてこれたものだと二宮は改めて感心する。

「まァこの調子で今後も頼むぞ」

「社長のご期待に添えるよう尽力を致します。
…ただ…ひとつ気になることといえば…」

「おう何だ何でも言え」

「ステイゴールドは他のホテルと比べて若い世代のお客様の獲得にはあまり力を入れていないように思われます。お得意様を大切にしている老舗のホテルですので当然といえば当然なのでしょうが先を見据えると少し問題視した方が良いかと」

「ふむ……なにが問題なんだ？うちのホテルもランチビュッフェやフェアも定期的にやってるだろ」

「そうですね…やはり全てにおいて価格が高いことと若者が好むカジュアルな雰囲気や企画が圧倒的に少ないことでしょうか」

「確かにショッピングモールに新しいカジュアルレストランをオープンさせたウエストジャパンホテルは若者向けの雑誌などに取り上げられ大きな話題になっていました。」

二宮がすかさずアシストをする。
瞬間大野の右の眉毛がピクリと上がった。

「ウエストジャパンだァ？それがどうした！真似をしろとでも言うのか！」

ウエストジャパンホテルは駅を挟んだ反対側にあるこちらも老舗のホテルであった。
東のステイゴールド西のウエストジャパン。
昔から言わずと知れたライバル関係だった。

「事実を述べただけです。」

涼しい顔を崩さず一番聞きたくない名前を言われ大野はひどく気分を害していた。

「まぁいい…ここで話すことではない。次の会議で問題を提起すればいいだろ。…気が向けばな！」

そう言い放つと大野はサッサと一人でエレベーターの方へと歩き出した。

「…すいません。穏便にすませようと思っていた私が社長を怒らせてしまいました。」

二宮は櫻井に頭を下げた。

「いえ何も間違っていません。大野社長の死角をこぼさず見ることができるのは二宮さんしかいませんよ。」

ああ…この男は少々苦手だ…
どうしてこうも余裕しゃくしゃくなのだ…
何もかも見透かされているような錯覚を覚える。
二宮は一礼すると足早に大野あとを追いかけた。