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”決して交わることはない”という 松本の言葉が大野の心を深くえぐった。
ああ…そうなんだ…オレは決して この松本潤という男と交わることはないんだ……
なぜだかそれがひどく悲しかった。
まるで全てに自分の存在を排除されたような そんな気持ちにされられた。
「…し…」
「は…？」
「…おの…さとし…」
「………」
「オレは……アンタじゃない…大野…智だ…」
「…えっ…」
松本は 目を疑った。
「…泣いてんのか…？」
さっきまで美味そうにリゾットを頬張っていた若社長が 突然 松本の目の前で大粒の涙をハラハラと流して泣き始めた。
急な”センセ〜！松本くんが 大野くんを泣かしました〜”という小学生あるある状態に松本は動揺を隠せない。
「ちょっ…ちょっと待て オレ…何か言ったか…? なんで泣いてんだよ！」
嗚咽をあげるでもなく エンエンと泣くわけでもなく ただただ涙が流れて流れてどうしようもなかった。
「なんか…わかんないけど……止まらない…」
松本は 急いで自分のバックから 朝 駅前でもらったティッシュを取り出すと何枚かを大野に渡した。
無表情のまま大野はそれを受け取ると 涙を拭う前に 思い切り鼻をかんだ。
それからも大野はひとしきり泣きじゃくり 5分ほどしてようやく止まった。
結局 松本は それを静かに見守ることしかできなかった。
「……落ち着いた…?」
「うん……」
大野の突然の涙に最初は焦ったが 何の感情も 何の表情も表さないまま こんなに涙って溢れ出るんだな…と不思議な思いで眺めていた。
「重ね重ね…申し訳ない…」
「まぁ…別にいいけど…どうせもう終電ねぇし…今日オレここの従業員室に泊まってくから。アンタ……大野さん どうする？足あんの？」
また泣きのスイッチが入らないように 松本は あえて大野さんと言い換える。
「タクシー拾えば スグだけど……」
「動けるようなら オレが拾ってやるから 家帰って ゆっくり休みな。アン……大野さんには…休養が必要だと思うよ。」
自分が倒れたせいで家に帰れなくなったっていうのに 優しい言葉をかけてくれる松本に大野はまた泣きそうになる。
諦めたわけではないが 先ほどキッパリとうちのホテルに来る意思がないことを告げられた今 ここでこのまま帰ったら もう松本と会えなくなってしまうのではという錯覚に陥った。
それだけはどうしてもイヤだ。
「松本くん うちに泊まっていけばいい」
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作者名：hikari | 作成日時：2020年6月6日 4時
