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父親だったものを抱き締めて次から次へと涙を流すシリウス。
拾った自分に愛情を注いでくれた彼が大好きだった。血は繋がっておらずとも確かに親子だった。
まだまだ恩返しは出来ていないのに彼はもう戻って来ない。それがどうしようもなく悲しい。
「とうさっ、父さん、嫌だ…嫌、」
「……そうだ」
ニィ、と笑ったリーラにジャックは顔を引き攣らせた。
上手く表せないがとにかくろくなことではない。
「…シリウス」
先程と同じようにシリウスを引き寄せる。魅了し、どこまでも優しい声色で。彼女を抱き締め撫でる手には慈しみを込めて。
そっと涙を拭って目を合わせる。
「あぁ…痛ましいね。呪いの代償が父親の死なんて……きっとアンタには耐え難いだろう」
それは優しいようで悪魔の囁き、禁断の甘露。
傷ついたシリウスの心にじわじわと染み込んでいく。
「もうアンタは1人だ、他になにも残ってない」
「……嫌だ」
「大丈夫 私ならアンタを1人にしないよ…?
ずっと一緒にいられる」
なんつー悪魔だ、とジャックは思った。
シリウスはリーラを抱き返した。「本当に?」と尋ねて彼が頷くとしがみつくようにした。
弱味につけ込み、甘い言葉を掛けて自分のものにする。リーラのことだから興味本位面白半分だろう。
抱きついてくるシリウスの頭を撫でるリーラはまるで慈悲深い神父のようだ。
「さてジャック、そろそろ行こうか」
「お前……依存させたろ」
「この子が依存したのさ 私が捨てない限り抜け出せない
特に傷ついた人間は1度浸った甘露には自分から沈もうとするのだから」
「ヒュー、ホント悪魔だぜ」
「それはどうも」
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作者名:クヴァール&くろのちか x他2人 | 作者ホームページ:なし
作成日時:2018年7月5日 7時