花火はいつも綺麗 ページ25
本当は今頃グクと一緒に居るはずだったのに、なんて考えても意味がないことばかりが浮かんでくる。
涙はもう出尽くしてしまって、虚しい気持ちだけが部屋に充満していく感じがした。部屋の電気も、テレビも付ける気になれず、静かな部屋には外ではしゃぐ声が響く。30分後には花火が上がるから、みんな楽しみで仕方がないんだろう。私なんて、花火大会が一生のトラウマになってしまいそうなのに。
そんなことを考えていると、急にお腹が鳴る音がして、今日朝から何も食べていないことに気付く。
せっかく買った浴衣だし、おばあさんにも申し訳ないからコンビニの店員さんにだけは見てもらおうなんて理由をつけて、浴衣を着たままコンビニに行くことにした。
外に出ると、さっきより人はまばらになっていて、日も沈んだため、少し涼しかった。
花火が上がるであろう方向を見上げて歩いていると、突然ケータイが鳴る。
誰だろう？と思って見てみると、ジンさんからで。結局あの後返信できていなかったことを思い出して、慌てて電話に出ると、
JN『A？！今どこにいるの？』
謝ろうと思っていたのに、ジンさんの勢いに圧倒されてしまって、
「コ、コンビニの前です！」
と返すと、
JN『絶対そこにいて！動かないで！』
とだけ残して電話がすぐに切れてしまった。
どうしたんだろう？と考えていると、すぐにバタバタと足音が聞こえてきて、
JN『A！』
と大きな声でジンさんが私を呼ぶから、少し恥ずかしかった。
ジンさんは、私の前までやって来ると、
JN『良かった…』
と言って優しく微笑んだ。訳が分からず、ジンさんの顔を見ると、
JN『とりあえず、花火見に行こうか？笑』
と言って、私の手を掴んで歩き出した。しかし、ジンさんが向かう方向は会場とは逆で。
「ど、どこ行くんですか？」
と聞くと
JN『すぐに分かるよ』
と答えて黙々と歩くジンさん。
そして着いたのは、公園だった。
「どうして公園…？」
JN『特等席があるから！笑』
そう言って、ジャングルジムを指差すジンさん。
JN『浴衣だから少し登りづらいかもしれないけど…笑 僕も手伝うから、一緒に登ろう！笑』
キラキラの笑顔でそう言われてしまったら断るわけにも行かず、了承の意味も込めて頷くと、嬉しそうにして私をジャングルジムに引っ張っていくジンさん。
なんとかてっぺんに登り、座ることができた瞬間、花火が上がった。
「綺麗…」
夜空を照らすそれは、皮肉なぐらい綺麗だった。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1930人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sonel(プロフ) - めろんさん» 初出しです…！意図せずどなたかの作品と似てしまっていた場合は申し訳ないです…(T . T) (2021年8月13日 21時) (
レス) id: e14fbab7d1 (このIDを非表示/違反報告)
sonel(プロフ) - 通りすがりのKさん» お返事遅くなってすみません(T . T) 心を込めて読んでくださって嬉しいです(T . T) 続編も出ておりますのでお楽しみください！ (2021年8月13日 21時) (レス) id: e14fbab7d1 (このIDを非表示/違反報告)
めろん - このお話って前にも出してましたか？ (2021年7月16日 16時) (レス) id: 6374d6be3e (このIDを非表示/違反報告)
通りすがりのK - これまでに無いくらい号泣しました。何よりも主人公が良い子過ぎて…続編も期待しております。 (2021年7月16日 2時) (レス) id: 60b46b46ac (このIDを非表示/違反報告)
sonel(プロフ) - やっちょこさん» 優しいお言葉嬉しいです(T . T)そして主人公ちゃんを応援してくださってありがとうございます( ´ ▽ ` ) (2021年7月3日 0時) (レス) id: e14fbab7d1 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sonel | 作成日時：2021年4月3日 18時
