束縛愛Part4 (ページ31)

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〜智〜

そして、今現在

智｢櫻井画伯は何描こうとしてんの？｣

翔｢A｣

智｢え……。いやぁ、花とかにすれば？｣

翔｢智くん。確かに俺の画力は酷いかもしれない。でもね！この俺が、Aを描けないと思う？｣

智｢思うからやめたほうがいいって言ってるんだけど。ほんと、お願い。可愛いAを、例え絵とはいえ残酷にしないで｣

一生懸命お願いすると翔くんは不服そうに唇を尖らせてスケッチブックを置いた

翔｢Aは絶対、可愛く描けんのになぁ｣

どこからくるのか、その自信

翔｢A。宿題終わった？｣

智｢美術で絵を描いてたんだっけ｣

｢授業中に終わらなかったから。何とか終わってホッとしてる｣

翔｢ふーん。何描いたの？｣

｢そんな大した物じゃないから｣

翔｢うん。その、大した物じゃない物を聞いたつもりだったんだけど。Aの絵、見たい｣

｢見てもつまらないから｣

笑って目を逸らすのは本当に見せたくないから

でも、翔くんはAのことに関しては常に関わっていたい独占欲の塊で

翔｢見たいな。Aが描いた絵｣

さりげなく両手を包むのは逃げられないようにするため

翔くんの行動のほとんどは、無意識に行われている

ただただ、Aを愛しすぎるが故に

｢智に頼んだら？｣

矛先がなぜか向けられた

翔｢俺はAの絵が見たいの。そりゃ智くんは上手いけどさ｣

Aのじゃなければ意味がない

流石にそこまでは言わなかった

だってその先を言ったら、俺に失礼だもんね

翔｢暇だしパズルでもやってよ。智くんはでっかい絵を仕上げるんだったよね。頑張って｣

引き受けたときはいけると思った

いざ、描き始めたときも調子が良く、すぐ終わるんじゃね？って思った

実際は、途中からやる気がなくなって……

その原因が翔くんにあるのはわかっていた

あんな風にAを独り占めされて、気にならないわけがない

翔くんはさ、普通にズルいよね

家にいるときも、仕事中だって時間があるとすぐAに電話する

俺達だってAの声だけでも聞きたいのに、ギリギリまで独占

嫉妬を通り越して時々、憎しみが溢れでる

そんな俺が唯一、翔くんに勝ってることがあるとしたら、Aの絵を見たことがあるってこと

あの日、描かれたマグカップにしては形が歪で、言われてもピンとはこなかった

とどのつまり、Aの絵は壊滅的に下手だった