めいちゃんの執事〜右目は盲目の少女〜 (ページ11)

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『久しいな。お二人さん方。
お見送りですか？それとも何かお知らせでも』

令嬢然らしく、あり方を固定したような口調で、諭すように問う。
べるは、本郷家のやり方に、加担したい訳ではない。自分の両親の事上に、よって仕方なく立場がない。
いわゆる「寄付金」のおかげで、現在の都姫家が成り立っている。
成り立たせないと、お寺の経営に関わる。建物を建て直すにも、莫大なお金が必要なのだ。億単位のお金。そんな巨大な富(とみ)を持つものとしたら、今の世は、本郷家。

やらせない思いが、重く重く沈む。鬱屈な気持ちが、心を揺るがす。
なんとも言えない虚無感を、抱きながらも、目の前の執事たちを「羊(ひつじ)」のように扱うことはない。

「人と羊の区別」ぐらいは出来る人間でありたい。と心のどこかで、いつの日か、つぶやいたことを心の中で思い出していた。
大昔の時代は、労働法があやふやで、不当な扱いを受けていた使用人たちも、数知れない。
人間扱いをしてもらえない豚小屋みたいな環境を、強いられる。
重い目蓋を開き、視界に光が差し込み、現実の景色がみえる。
すべて、モノクロだ。盲目(もうもく)になってから、黒と白が、なんとも似合う。

「日本ご令嬢定例パーティーお疲れ様でした。
失礼な扱いを受けませんでしたか？」

失礼な態度を、取るお金持ちの輩も、いない筈がない。
ただ、むかしの「仕打ち」は、今も尚、笑顔を消すのに、
充分過ぎる。
ーーー

執事たちが、意味深な表情で、頑なに心配を促す素振りを見せる。
本郷家が、関わっている事件に、都姫家の令嬢を巻き込んでしまった配慮なのか、情けなのか。
それとも都合のいいお人形だと、思っているのかもしれない。
べるも、理性で理解はしているが、本能が何かしらに拒む。
ただ、目の前の執事たちは、ただ従っているだけの存在。
何も責任はない。責任者は主君(ロード)だ。

べるは、パーティー姿のドレスを、纏っている。上からブラウスのような衣(ころも)を、羽織っている。色は紫色。ドレスは青色。喪服で来てやろうか、と喧嘩越しなところもある。軍服でも構わない。はたまた制服でも良い。

派手さな行事が苦手。見栄を張ることも苦手。また、いいあだ名のように「盲目な令嬢」と、口々で噂の的だ。

『嗚呼・・。
お陰様で金太郎叔父様の手厚いご支援を受けているので並大抵の輩には負けないですよ。
パーティーなんて見栄ばかりのハッタリですから』