127 ページ27
．
無造作な灰色の髪に、細身な身体。
Aには彼が出会ったばかりの頃の啓悟よりも小さく見えた。
人気のない路地裏で、うつむいたまま少年はガリガリと自分の顔や首を掻きむしっている。
『＿＿＿血が出てるよ。それ以上は掻かない方がいい』
Aがそっと声をかけると、少年はいっそ哀れなほどにその場でビクリと飛び跳ねた。
なるべく驚かさないように気をつけたつもりだったが、つい癖で足音を消して歩いていたのが良くなかったみたいだ。
こちらを見上げた少年は、シワだらけの瞼と異様な眼光を携えており、その精神状態が普通ではない事を感じさせた。
右口元にはホクロ。
唇の回りはカサカサに乾いていおり、右目と唇には裂けたような傷跡がある。
治療しようとAが一歩近づいた瞬間、少年は逃げるように後ろに下がって、真後ろにあった壁に勢いよく頭をぶつけた。
『あ。ごめん』
少年は何も答えない。
代わりに、ヒューヒューと荒い呼吸音が静かな路地に反響している。
そんなつもりは全くもって無かったのだが、まるで小動物をいたぶっているような構図だ。
少年が心底怯えているのがヒシヒシと伝わってきて、何だかとても酷い事をしている気になってしまう。
『大丈夫。怖くないよ。私は君に危害は加えない』
両手を顔の横で開いて見せて、敵意はないのだとアピールしてみる。
しかし少年は依然として鋭い眼光でこちらを睨みつけており、これではまるで警戒心むき出しの野良猫だ。
どうやら、やきとりよりも随分と手のかかりそうな子猫を見つけてしまったらしい。
どうしたものかと頭を悩ませていたAは、しばらくして不意にひらめいた。
そうだ。この仮面が怖いのだと。
思えば、啓悟も廻も燈矢だってこの仮面を不気味だと評していたような気がするし、子供受けが悪いのだとここで初めてAは気がついた。
ヒーロー活動中は素顔を晒さないというルールはあれど、仮面が妨げとなって活動に支障が出ては元も子もない。
今回ばかりは例外だろうと判断して、Aはおもむろに仮面を外した。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 543人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
メケメケ(プロフ) - ユナさん» コメントありがとうございます！うわ〜やっぱりそうですよね！笑 「ちゃん」「やったけん」しか私も使ったことないです！すっごく参考になりました〜！これを踏まえて修正していきたいと思います。貴重なご意見本当にありがとうございました😊 (11月15日 22時) (
レス) id: b7e3c883a2 (このIDを非表示/違反報告)
ユナ(プロフ) - 初コメ失礼します🙇いつも楽しく読ませて頂いてます!!私も福岡出身なんですが「ばい」はあまり聞かないですね…「たい」ですらあまり使わないです笑笑「〇〇っちゃん「〇〇やったけん」などは凄く使いますが…、参考になれたら嬉しいです😊🫶 (11月15日 22時) (レス) @page50 id: c774a0bc03 (このIDを非表示/違反報告)
メケメケ(プロフ) - アニメ大好きさん» 初コメありがとうございます！ここまで15万字くらいあるので読むのも大変だったでしょうに、それほど夢中になってもらえたんだと思うとすごく嬉しいです😭色んなキャラとドンドン関係性を深めていくので、先に行くほど面白い物語だと言ってもらえるよう頑張ります！ (11月13日 20時) (レス) id: b7e3c883a2 (このIDを非表示/違反報告)
メケメケ(プロフ) - もよよぴさん» 嬉しいです！ちょっと爆速更新し過ぎて疲弊してしまったので、数日ほど休憩するかもしれませんが、またすぐ�い盻颪�始めますのでぜひまた読みに来てくださいね〜！私はもうもよよぴさん無しでは更新できない身体になってしまったので並走してくださいお願いします！笑 (11月13日 20時) (レス) id: b7e3c883a2 (このIDを非表示/違反報告)
メケメケ(プロフ) - もよよぴさん» 傷ついた幼女を包み込めるのはヒーローのマントと相澤消太って相場が決まってますからね!! もよよぴさんの感想コメントはいつも好きポイントを丁寧に書いてくださってるので読んでてとても楽しいし嬉しいし幸せです〜！夢主の事も温かく見もっていただけてとっても (11月13日 20時) (レス) id: b7e3c883a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：メケメケ | 作成日時：2023年11月4日 17時
