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家に帰った途端、
雪への思いのままに私を抱く勝利だけど
行為が終わったあとは
私の事をしっかり認識できているようだ。
薄暗くなった外、
電気も点けずにベッドの上で抱きしめ合う。
勝「…雪に聞いたんだ、俺」
「………何を?」
勝利の顔は暗くて見えない。
勝「健人くんのこと、」
やっぱり好きだって、
苦しそうにぼそっと呟いた。
勝「…わかってたのにね、」
「……うん、」
勝「馬鹿だなあ、俺」
へへって自嘲的に笑う声、
そんなの強がりだってわかって
「泣いてもいいよ、」
勝利の背中に回していた手に力を込めた。
勝「…ごめん、A」
声を押し殺して泣く勝利を、
慰めてあげることなんて出来なくて。
できればそのまま雪を諦めてくれれば、
なんて酷いことを思ってしまう。
自分勝手な自分が大嫌いだ。
本当は雪の事で泣く勝利なんか見たくない、
だけどこの弱味に漬け込まなければ、
私は雪の代わりですらいられなくなる。
「…辛かったね、」
思ってもないことを言う。
私は昔より、嘘つきになった。
平気で嘘をつけるようになった。
勝「ねえ、A」
不安げな声が私を呼ぶ。
「ん?」
勝「Aは、俺のものだよね?」
上目遣いの勝利にドキッとする。
どれだけ身体を重ねても、
やっぱり勝利の言動には慣れない。
真っ赤な頬を右手で抑えながら、
「…もちろんだよ、」
彼の唇に触れるだけのキスをした。
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例え私が勝利のものでも、
雪が勝利のものになってしまえば私は用済み。
高鳴った胸を抑えるように、
そう心に言い聞かせた。
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凛(プロフ) - すごく楽しく読ませて頂きました!次の更新も楽しみにしてます! (2020年3月31日 11時) (レス) id: e40b2e9bf4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:みい | 作成日時:2020年3月16日 19時