希望、それは戯言 (ページ46)

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…/ab ページ46

『見つかった？』
kj『駄目や。どこにも見当たらん。』
sk『俺も探してるけど…うえ、酒臭い。』
fk『俺の所もまだ来てない。』
iw『俺もだ。』

暗黙の了解の何かしらの緊急事態でも必ずつける無線で話しながら、目を光らせて辺りを見回す。もう時間が結構経ってる。まさか、もう街を出た？

その可能性を消し去るように、焦った声が耳に入った。

sk『っいた！真っ直ぐふっかの方に向かってる！』
『…やっぱり街出ようとしてる。』

よかった。予想は当たっていた。夜の街を探してもらっていた佐久間が声をあげるって時点でほっとしていた。でも、そんな余裕はない。足を早めながら、無線に耳を傾ける。

sk『阿部ちゃん。』
『何？』
sk『目黒、知らない子と話してたよ。』
『は？』
kj『え！？さっくん、それほんとなん！？』
sk『うん、この目でしっかり見たよ。』
fk『最近やたら散歩に出掛けてたのは多分それだね。』
iw『あいつの心理が読めないな。』

何だそれ。何も知らない。でも、俺以外も同じような反応だ。誰にも言わずにいたのか。でも、あんな死にたがりが、誰かと関わるだなんて…また無意識、か？

fk『ごめんけど、死なせるつもりないって言ったよね。』

無線から聞こえてくる。どうやら何とかなったっぽい。やけに心臓が煩かったのが治まっていく。本当にとんだ迷惑。

見知らぬ声と目黒の声が聞こえてくるけど、何を言っているかは聞き取れない。それに夜の街に入ったせいで、無線の声が聞こえずらい。ここはいつも騒がしいところだ。

sk『目黒！』

焦ってる佐久間の声。ああ、きっと路地裏に行ったのだろう。やっぱりあの策を伝えておいてよかった。

iw『残念だな。』

ほらねなんて内心ニヤつきながら、佐久間と康二の姿を目で捕える。その奥には…やたら高身長の奴と絡んでいるふっか。また面倒事が増えたな。もう大丈夫だと認識したのか皆が次々と無線を切っていく。

sk「あ！阿部ちゃん！遅いよ～！」
kj「ほんまやで！」
「言っとくけど、俺かなり遠い所にいたんだからね。」

皆と合流してそのまま家に帰る。目黒は高身長の子に強引に連れてかれてるような形になってるけど。それでも、良かった。こうして戻ってきてくれて。もうこんな事思ってる時点で追い出す事は出来ないか。

dt「ふふ、おかえり。」

探している時間はあんなにも長かったような感覚がしたのに、帰る時はあっという間だった。佐久間は相変わらず目黒に喋り倒していて、康二も少しながらのっている。