希望、それは戯言 (ページ43)

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…/ab ページ43

急いでリビングに向かって、掃除道具一式を手に持って部屋へ走った。何事だと聞かれたが、答えてる暇はなかった。助けなきゃ、その一心だった。

「持ってきたよ。とりあえず服脱がして。」
iw「ごめん、破るぞ。」

部屋についてとりあえず照にゴム手袋を手渡して、自分もはめてごみ袋を用意する。すると、目黒の体は傷だらけだった。思わず顔を逸らして、痛感した。文面だけで見たあいつの過去はあんな淡々と綴られるものなのではない、と。もっと残酷で絶望的で。言葉に表せないものなんだ。

iw「阿部。ごみ袋開けてくれないか。」
「…あっ、ごめん。すぐ開ける。」

その後はほぼ照がやってくれた。俺は何処か一点を見つめている目黒に近寄り、服を着せることしか出来なかった。ある程度したら交代するなんて言っておいて、全部照がやってくれたじゃないか。

そのまま照も服をごみ袋に突っ込んで、ゴム手袋を外し、手渡した服を着て、目黒を姫抱きする。俺は一足先に部屋を出て、手を洗って和室に行き、布団を敷いておく。照が目黒を下ろし、俺は目黒の部屋に行こうとした時、声をかけられた。

iw「目黒の傍にいてくれ。」
「…照の方が適任でしょ。」
iw「少しは避けるばっかじゃなくて話せっつってんの。」
「は？何それ。」
iw「図星か？」
「煩い、分かったからさっさと行って。」
iw「はいはい。」

確かに避けてた。仲間と認める気がなかったから。少しは話って何すればいいんだよ。沈黙は苦手だけど、佐久間が常に話しかけてくれてたから、何も考えずに済んだのに。

「俺はふっかと佐久間が帰ってくるまでの見張りだから。来たらすぐに出てく。」

そう言っても、目黒は何も反応しなかった。ああ、面倒臭い。何で相手なんかしなきゃならない。気を紛らわす為に小さめの本棚から適当に本を取り、読み始める。もう何度も読んだものだから内容は頭にこびりついている。ああ、早くこの時間が過ぎてくれないか。

そういえば、先程から気になっていた事がある。聞いていい内容かは分からない。正直嫌だと言われる可能性の方が高い。でも、どうしても知りたくなってしまった。

「…一つだけ。」

すると、目黒がゆっくり長い睫毛を動かした。何を聞かれるのか何となく分かっているのか。俺はそのまま話し続けた。

「さっきの体の傷は何。」
mg「…あんたに関係ないだろ。」

やはり答えてはくれないか。それでも知りたかった。普段ならしつこく聞いたりしないのに。暗闇に居続ける目黒に手を伸ばしたかった、なんて何を言っているんだろう。