299. ページ49
「また今度ちゃんと話すけど。俺の父親、公安とは対立してるんだ」
「公安と対立って……え、何かヤバい仕事でもしてるの？」
吹き出した大野。
会話が聞こえていたらしい二宮も、通信機の向こうで笑っている。
「違う違う。櫻井のお父さんは部隊の上の国の役人」
「あ」
なるほど、と顔を赤くした松本。
二択を間違えたらしい。
『とにかく、ヤバい相手なのは間違いないから。早めに帰ってくるんだよ』
「了解。状況把握したらすぐ帰る」
通信を切って、二人を振り返った大野。
そろそろ煙幕も少しは薄くなってくる頃だろう。
「窓ガラスを割るよ。防弾ガラスだから人力では無理。櫻井と松本は入ったらすぐにガラスを銃で撃って、出られるようにしておいて」
「え」
目を丸くした櫻井。
大野は呆れ顔になった。
「帰りもこのピアノ線を避けるつもり？ ちょっと派手になるけど、ヒビさえ入ればこっちのもんだからさ」
「あぁ……わかった」
防弾ガラスとはいえ、何発も弾を撃ち込めばヒビは入る。
思い切り蹴ればそのまま割れるだろう。
「帰りは全力ダッシュ。バラバラになってもいいから、ついてくるやつがいたら撒いてから戻ってね」
道は覚えてるでしょ？ と言う大野に、頷く二人。
アレボルの場所こそ知らなかったものの、この繁華街の地図は元々頭に入っている。
「万一戻れなくなりそうだったら『コードスリーナイン』って通信入れて。本部に繋がる方の通信ね。そしたら通信機のGPSで本部からは居場所がわかるから」
瞬きをした松本。
「これGPSついてるの？」
「そうだよ。え、知らなかった？」
「知らないよ」
一般隊員には伝えてねえのか、と大野は呟く。
「だから通信機は持ち運べって言われるんだよ。持ってなかったら居場所の特定にえらく時間がかかる」
「でもそのコードも知らなかったけど」
「うそぉ、それも一般隊員には言ってないの？」
信じらんない、と目を丸くする大野を見て、櫻井は肩をすくめる。
「こっちも信じらんないよ。大野くんはどこで知ったわけ？」
「雹隊に入ったとき。こりゃ参ったな」
話を聞く限り、『コードスリーナイン』というのは緊急コードだ。
それを知らされている隊員と、知らされていない隊員がいる。
「嫌な感じだね」
「だね。コードを知らされてない隊員は助けに行かないってことだ」
とにかく、と大野はドアに手をかけた。
「退路を確保したら状況把握。よろしく」
「了解」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 548人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翔成(プロフ) - 再開、待ってました！新しいお話の更新、楽しみにしてます！ (2022年9月3日 3時) (
レス) @page16 id: df0fa1ba00 (このIDを非表示/違反報告)
nyan(プロフ) - 折角なんで一から読み返して来ました。楽しかった〜♪ (2022年9月2日 17時) (レス) @page16 id: 2c77e9de22 (このIDを非表示/違反報告)
Kar(プロフ) - 嬉しいです(ृ´͈ ᵕ `͈ ृ ) 更新をのんびりお待ちしております！ (2022年8月30日 19時) (レス) @page15 id: 85f86a18df (このIDを非表示/違反報告)
nyan(プロフ) - おかえりなさい♪ (2022年8月30日 18時) (レス) @page15 id: 2c77e9de22 (このIDを非表示/違反報告)
ちろる - ちょいと寂しいけど、長い間ありがとうございました！良い人生を！ (2021年10月25日 0時) (レス) id: c48e44e08a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2021年8月11日 8時
