294. ページ44
「気になる名前？」
「うん、もしかしたら」
今度は別のことを調べ始めたらしい。
真剣な顔をしてパソコンに向かっている二宮。
柳谷は黙り込んでいたが、相葉の顔を見た。
「訓練場の天井の高さが違うの、気づいてましたか？」
「ん？ 訓練場？」
「はい。霰隊と雹隊の訓練場の天井の高さが違うんです」
そう？ と首を傾げた相葉。
少し考えていたようだが、「確かに」と呟いた。
「雹隊に来たばっかりのとき、なんか違うなって思った気がする。この間霜隊に行った時もなんか違うなって……そっか、天井なんだ」
それがどうかしたの？ と聞く相葉に、二宮はパソコンを見たまま答える。
「訓練場の天井裏は隠し部屋になってたはず。資料としては知ってるけど、俺も見たことない。ここ何十年か封鎖されてる場所のはずだよ」
集中しながらも話は聞いていたらしい。
「柳谷さん、よく気づいたね？」
「いえ、気になったので。やっぱり隠し部屋になってるんですね」
「そう。隠し部屋の入り口は保管室の中と……もう一箇所はどこだっけな」
うーん、と唸る二宮を見て首を傾げた柳谷。
「射撃場じゃないですか？」
「射撃場……あ、そうだわ。えっ、何で分かったの」
さすがに振り向いた二宮。
「射撃場、綺麗でしたから」
二宮は数度瞬きをする。
「綺麗だった？」
「はい。この間の訓練のとき、ちらっと覗いたんですけど。掃除されてるみたいで綺麗でしたよ」
相葉と顔を見合わせた二宮。
それはおかしい。
射撃場での訓練はここ数年行われていない。
雹隊ですら射撃場は使われておらず、掃除もされていなかった。
「誰か使ってた？」
「かもしれないね。俺はそっちの方行かないって知ってただろうし」
雲隊とはまた別で、何かが雹隊の中で動いていたと考える方がおかしくないだろう。
「楠木さん側の人たちかな」
「そうだと思いたいね。じゃないと身内に裏切り者がいたって話になるし」
これ見て、とパソコンの画面を二人に見せた二宮。
表示されているのは人の名前。
「野村誠？ 野村って」
「そう。俺も名字が気になって調べた。野村さんのお父さんだったよ」
相葉は顔をしかめる。
「野村さんのお父さん、公安警察だったの？」
親が国の役人などであり子が部隊に所属する、という話は多くはないが珍しいものでもない。
だが、親が公安警察なのに子が部隊に入るというのは変な感じがするのだ。
「親の仕事を知らなかった柳谷さんはともかく……変だね」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 548人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
翔成(プロフ) - 再開、待ってました！新しいお話の更新、楽しみにしてます！ (2022年9月3日 3時) (
レス) @page16 id: df0fa1ba00 (このIDを非表示/違反報告)
nyan(プロフ) - 折角なんで一から読み返して来ました。楽しかった〜♪ (2022年9月2日 17時) (レス) @page16 id: 2c77e9de22 (このIDを非表示/違反報告)
Kar(プロフ) - 嬉しいです(ृ´͈ ᵕ `͈ ृ ) 更新をのんびりお待ちしております！ (2022年8月30日 19時) (レス) @page15 id: 85f86a18df (このIDを非表示/違反報告)
nyan(プロフ) - おかえりなさい♪ (2022年8月30日 18時) (レス) @page15 id: 2c77e9de22 (このIDを非表示/違反報告)
ちろる - ちょいと寂しいけど、長い間ありがとうございました！良い人生を！ (2021年10月25日 0時) (レス) id: c48e44e08a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：翠霞チサ
| 作成日時：2021年8月11日 8時
