47 You ページ47
一礼して部屋を出て行く樹に手を振って。
『おかえりなさい、お仕事お疲れさまでした。』
大「長く留守にしてごめんね。俺、今日と明日は城にいられるから。」
樹と向かい合って座ってた窓辺のテーブルに、
今度は大我さんと向かい合って。
私達の間に置かれたチェスを、大我さんは不思議そうに見ている。
大「これ勉強したことあったな…。チェスだっけ？」
『そうです。樹が用意してくれたの。
一緒に指しますか？』
大「ううん。ごめんね、今はちょっと…難しいこと考えたくないかな。」
あ、そっか。疲れてるのに…。
気が利かなかったな。
『じゃあまた今度一緒にやりましょうね。』
大「ふふ、そうだね。
…A、ごめん。ちょっと来て。」
『？』
こっちこっちと部屋の中で手を引いて。
これも大我さんが用意してくれた、一人で寝るにはやたらと大きいベッド。
毎日好き放題寝返りを打ってる。
そこに私を座らせると、
大我さんはこの膝を枕にしてころんと寝転がった。
大「俺すごい頑張った。」
『うん、』
大「別に即位すんのが嫌なわけじゃないんだよ？」
『うん。』
大「だけど好きで王子に生まれたわけじゃないからさ…、
納得いかないことあると割りきれないんだ。」
ぽつりぽつりと溢れる大我さんの小さな弱音。
“好きで王子に生まれたわけじゃない”
その一言には、言葉以上にもっともっといろんな意味が…
大我さんの抱える苦悩や葛藤が全て詰まっているように聞こえた。
私は…
具体的に何かしてあげられるわけでも
すべてをわかってあげられるわけでもないけれど、
大「Aの癒し効果すげーわ。」
膝の上の綺麗な金髪を撫でれば、
大我さんは気持ちよさそうにとろとろと目を閉じた。
ただ頷くだけでも、
この華奢な体には大きすぎる重圧の中から
何かひとつくらい軽くしてあげられるなら…。
大「ねぇ、Aは？何か困ったことなかった？」
『いえ、皆さん親切にしてくれてます。』
大「皆さん？あぁ、そういえば樹から聞いたよ。
大工たちの服を直したいんだって？」
『だめでしょうか？』
始めはやっぱり樹と同じく渋っていたんだけど、
大「Aがそうしたいならだめって言えない。」
下から私の頬に手を伸ばして、
でも夜なべとかしないでね？って笑った。
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momo(プロフ) - 綾鷹さんお久しぶりです。久々に読み返しています。まだ途中までしか読めていませんが全てを知った上で読み返すと、自然と涙が溢れてきます。きょもの気持ちも、北斗の気持ちも、主人公の気持ちも、カヤの気持ちも。全て知った上で読むとさらに切ないです。ずっと大好き (2022年4月30日 20時) (
レス) @page16 id: 7c710f6426 (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - いつもご感想ありがとうございます、とてもとても嬉しいです！カヤちゃんのことも好きになってもらえてよかったですー！がんばります！ (2019年5月6日 6時) (レス) id: f953e13246 (このIDを非表示/違反報告)
momo - なんだか、このお話を読んでいて、使用人のカヤの事を思うと胸が苦しくなって面白いです！ このお話やっぱり大好きで、目が離せません！頑張ってください。 (2019年5月5日 10時) (レス) id: cbb25d61fe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - momoさん» おわわ、恐縮です…！ありがとうございます！これからの展開も好きになって頂けるよう祈りつつ頑張ります！ (2019年5月1日 20時) (レス) id: f953e13246 (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - なゆさん» いつもコメントありがとうございます、とても嬉しいです。このお話の京本くんは一途すぎるくらいに書きたいと思っていたのでそう捉えて頂けてよかったです！ (2019年5月1日 20時) (レス) id: f953e13246 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：綾鷹
| 作成日時：2019年4月15日 7時
