大切な人をさがしています

46You ページ46

『わぁ！チェスだー！』

樹「なんだよ、お前知ってんの？」




樹がチェスを持ってきてくれた。




『うん。…幼なじみがこれ好きで、よく指してたの。』




私は負けてばかりだったけどね。





次の日だって早朝の暗いうちから漁に行かなきゃいけないから、
きっと早く寝たかったはずだったのに、

私が負けるたび何度ももう一回って言って
二人でよく夜更かしして…。


最後の方は私が拗ねないように手加減してくれてたの、
本当は知ってたよ。



思い出せば泣きそうになるから、
最近は考えないようにしてたんだけどなぁ…。




樹「…A？どうかした？」


『なんでもないよ。


樹はやっぱり優しいね。』




夜私におやすみなさいをした後、
最近よく街へ出かけてるみたいなことをカヤさんから聞いてたけど、

このチェスも、あのカードも…
もしかして私のためにわざわざ買いに行ってくれたのかな。



もうお前の部屋でしか使わないだろうし、置いておいてよ。



なんて。

前から持ってたみたいなこと言ってたけど…



両方とも真新しくてピカピカ。

ゲームの説明書きすら、皺ひとつない。



こんなに優しい嘘をつく人、そういないよ。



ありがとうと素直に口にすると、
樹は照れたのか明後日の方を見て苦笑い。




樹「ガチで褒められるの、俺ちょっとだめなんだけど。」

『じゅりくんやっさしーい！』

樹「からかうんじゃねぇ！」






大「A、入るよ。」




数回ノックの音がして、久しぶりに聞いた大我さんの声。


やっと仕事が落ち着いたんだ、って
ふう、と小さく息をついた大我さんは余程忙しかったんだろう。

少しお疲れみたいだ。




大「樹、俺いられるから、下がっていいよ。」

樹「はーい。」

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