病院の一角 ページ11
優斗side
都内に
大きく聳え立つ綺麗な病院
あの中に、俺の最愛の人は住んでいる
蒼弥 「優斗」
毎日俺が病室に入るまでは
ベッドを起こして窓の外を見ている
雨の日も晴れの日も変わらずに
寂しそうに、
外にいた頃を懐かしむ様に
蒼弥 「俺、不治の病にかかってるんだって」
会いに行った俺に気づくと
嬉しそうに、でも少し悲しそうに笑う
蒼弥 「不治、って分かる？
優斗には分かんないか...笑
もう一生治んないんだって」
会えなかった期間に何をしていたか
たくさん話す時もあれば
ただ手を握っているだけの時もある
蒼弥 「笑っちゃうよね...
一生病院から出られないんだよ」
それでも、それだけだと思っていた
蒼弥 「もしここから出れるなら
優斗とどこかに行きたいな
優斗とだったらどこにでもいい」
ある日、いつものように病室に入ると
蒼弥は眠っていた
昨日はなかった、
腕に点滴を付けられている
その日はそのまま起こさなかった
代わりに置き手紙を置いておいたら
帰った後、お礼と嬉しそうなラインが届いた
蒼弥 「でもね、出れなくても
不治の病だけど一生治らないだけだから
ずっと優斗といられるよ」
次の日、病室に入ったら
呼吸器をつけられていた
苦しそうな呼吸音とともに
骨張った胸が上下していて
昨日より細くなった腕から
昨日より量の多い点滴が繋げられていた
蒼弥 「そうお医者さんが言ってたの
だから優斗も、ずっと俺と一緒にいてよ」
その日も手紙を置いてあったけど
ラインが届くことはなかった
次の日
どうしてもどうしても
外せない用事が出来てしまった
蒼弥 「でももし死んじゃうなら...
優斗と手繋ぎながら死にたいかなぁ...
で、最後の最後にキスして欲しい」
その次の日
病室に入ると、中は空っぽだった
誰に尋ねても答えは返ってこなくて
次の日俺は海に飛び込んだ
蒼弥が病院に入る前
最後に一緒に来た海へと
冷たい水と揺らめく海の底が
俺のことを呼んでいた
end
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作者名：soya._.soya | 作成日時：2021年5月25日 22時
