knife ページ48
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安田さんの部屋はその白いマンションの最上階にあった。
扉を開け
部屋に入るとすぐに
甘い香りが私を包む。
自宅とはいえ、
この部屋はなんなんだろう。
まるでサロンのように美しく
しつらえてあるその部屋は
ミント色の壁に
すみれ色のカーテンで
苺みたいに赤いソファ
大きなガラスの花瓶には
こぼれ落ちそうなくらいの
たくさんの白い花が活けてあり
大きなチョコレート色のテーブルの上には
色とりどりのマニキュアの小瓶が何十本と並ぶ。
なんとなく、
昔読んだ童話に出てくる
お菓子の家を彷彿とさせた。
私が少しおどろいて部屋を見渡していると、
「…ここにもたまにお客様来るんですよ。
それこそ…有名人の人とかね。」
安田さんは、そう言いながら
マッチを擦る。
小さな炎が彼の指先で灯る。
それは、ガラスに入ったキャンドルに移された。
…
…
いつか、どこかで嗅いだようなアロマの香り。
いったいいつだったのだろう
思い出せないのに
なぜか
懐かしくて苦しくて
むせそうになる。
「どうぞ。」
安田さんは私をテーブルに誘導し、椅子を引いてくれた。
私はその椅子に招かれた客のように座る。
安田さんは
真っ赤なマニキュアの小瓶を手に持ち、それをじっと眺めている。
そして彼は私の向かいに座り、私の手をとる。
私の爪は
彼の手により
みるみるうちに深い赤に染まっていく。
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「…ほら
やっぱり似合う。」
全て終わると
安田さんは
私の指先をそっと
割れそうなガラスを持つように
優しく手に取り、満足げに微笑んだ。
そして
安田さんは
黒いメイクボックスの中から
シャネルの口紅を取り出し
「赤い、口紅もつけてみよか…」
そう呟いて、私の隣りに座り直した。
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ありえへんコンビの嫁(プロフ) - 感動して涙が出ました (2021年8月29日 22時) (
レス) id: 39f9ce47b8 (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - NobuYouさん» そうなんですー。丸山さんの為にどこまで堕ちるのかテーマにしたかったんですー！ていうか堕ちてみたいという願望のみで成り立つお話になっています…でも最近の丸山さんは頑張っていてほんと闇ないかんじで、それは素晴らしいことなんですけど先に進みません笑 (2017年5月29日 8時) (レス) id: acb9af0565 (このIDを非表示/違反報告)
NobuYou(プロフ) - 丸ちゃんのアンバランスさ、葡萄さんの表現の繊細さならではですね。主人公さんの周りには堕ちていかないよう助けてくれる人が周りに居て恵まれてるなって思っていたのに、安田さんは敵？味方？タップして次のページに行くのがもどかしいです。それ位早く先が読みたい！ (2017年5月28日 21時) (レス) id: beff6a0c0a (このIDを非表示/違反報告)
葡萄(プロフ) - ゆ きさん» ゆきさーん！(^^)いつもありがとう！！どうですか謎に包まれたこの物語。誰か解くことはできますかね。狂気を秘めた安田さんは美しいですよ… (2017年4月26日 17時) (レス) id: acb9af0565 (このIDを非表示/違反報告)
ゆ き(プロフ) - 朝からおじゃまします葡萄さん！！描写の向こうにある狂気がこちらにまで届く描き方、いつも素晴らしくてため息がでます。そして何よりも、なにもかも先が読めないよー…。まさに暗闇の迷宮。 (2017年4月26日 10時) (レス) id: bb20386137 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：葡萄 | 作成日時：2016年12月28日 11時
