男の子 ページ3
Aが入院して4日目、小児科病棟では新しく入院してきた男の子に手を焼いていた。
名前は手越祐也くん。
いま4歳で、母親から虐待と必要な医療を受けさせない医療ネグレクトを受けていたみたいで、誰とも口を聞かずに近づいただけで怯えられる。
それでもやらなければならないことだから、泣き叫ぶところを抑えつけながら診察や処置をする。
だから余計に怖がられる。
そんな悪循環を繰り返していたから、俺は目の前の光景に目を丸くした。
ただ廊下を歩いていたとき、なんとなくプレイルームに目を向けると、なんと祐也くんがAの膝の上で絵本を読んでもらっていた。
「成亮先生、あれ！」
偶然通りかかった成亮先生を引き止め、中を指差す。
「へー、祐也くんが。
というか、点滴があるから部屋にいろって言ってたのに、なんでAがあそこにいるんだよ。
そのまま一緒に遊んでて欲しいけど、点滴の時間があるからな。
一瞬祐也くんから借りて、また返すか。」
成亮先生は、感心したように言うと中に入っていく。
俺もその後を追った。
絵本に夢中だった祐也くんは、俺らが近づくと顔を反らしAの腕をキュッと掴んだ。
「どうしたの？ほら、絵本と一緒だよ？」
Aが読んでいた本は3匹の子豚で、指さす先には可愛らしい子豚がいた。
「しばくぞ。」
施設にいた頃、上級生にそうからかわれていたのが脳裏をよぎる。
「この状況でそれ言う？
昔は泣いて、違うもん！って怒ってたのに。」
これだから昔の話を知ってる奴は厄介だ。
「ほら、隣は狼さんだよ？
声がガラガラだもん。」
「黙れ。」
Aの隣には、オオカミと七匹の子ヤギが置いてある。
たぶん、さっきまで読んでいたんだろう。
「ん？どうした？」
祐也くんが、成亮先生を見つめてからAに耳打ちをした。
これは、少し仲良くなるチャンs…
「シゲ先生、祐くんが、シゲ先生の声が怖いからチョーク食べてって。」
そう簡単には行かないか。
「祐也くん、それはできないんだ。
Aも余計なこと言うな。」
「祐くんに向けてと私に向けて、温度差の落差がデカ過ぎない？」
「部屋にいろって言ったのにプレイルームで遊んでた奴に、優しくする義理はない。
ほら、点滴するから一旦戻るぞ。」
「待ってよ、今イイところなんだから！」
祐也くんの手前、成亮先生も少しだけ待つと答えた。
「末っ子のこぶたは、働きものです。」
「「序盤にも程があるだろ！」」
思わずツッコミが被ってしまった。
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りみ - お話とてもおもしろいです！次のお話も楽しみにしています！！ (2019年1月24日 14時) (
レス) id: 8375485de7 (このIDを非表示/違反報告)
てい - 楽しく読ませていただいてます (2019年1月12日 22時) (レス) id: 70fd39881e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：さんかく | 作成日時：2019年1月10日 15時
