第八話 お互いのために ページ8
第八話 お互いのために
10月20日。大翔の誕生日。
前日に例の物は届いた。
例の物っていうのはエプロン。
ずっと使ってるのか、近くで見ると結構ボロかったから、ちょうどいいと思った。
どんな反応をするか楽しみにしながら、いよいよ帰ってきた。
潤「大翔おかえり！あのさ…」
誕生日おめでとう！
そう言う前に大翔が口を開いた。
深「ごめん、またすぐ出なきゃならない」
え？
潤「どうしたの？」
深「お呼ばれ」
潤「誰に？」
深「…事務所の人？」
なんでそこ疑問形なのさ。
しかもちょっと間があったし。
でもそこまで突き詰めたらなんか可哀想で、俺が思ってることじゃなかったら失礼だから。
潤「そっか…いってらっしゃい」
いつもみたいに返すしか選択肢がなかった。
すぐに渡したかった。
大翔のために選んだのにな…。
潤、もしかして勘違いしたのかな。
潤のこと嫌いじゃない、むしろ好きで。
裏切ることなんかないから、変な考えはよせばいいのにな。
…裏切るって、もし、好きなままでこっちから別れたとしたら、潤を裏切ったことになるかな。
佐「手止まってんぞー」
深「…え、あ、佐田先生こそ、それ早く目通さないとダメじゃないですか」
佐「ああそうだわ」
明「料理中にボーッとするなんてらしくねぇー」
深「うるさい」
ガヤより自分の心の中の言葉がうるさいな…。
早く潤のとこ行かなきゃ…。
坂「大翔、今日もどっか行くの？」
佐「え、どっかって？」
坂「いや、最近こっちで寝ないんすよ。どっか泊まってるみたいで」
坂東さん、なんでこのタイミングでそれ言うのさ。
佐「そんなんするのかお前。あ、するか…」
明「そうですよ、ホームレスと一緒に丸2日過ごした奴ですよコイツは」
佐「あれもう5年前かー、懐かしいなー」
危なかったけど、なんとか話題が逸れてくれた。
でも油断したせいで、味見したら作ってたものがいつもの味じゃなかった。
まあ、微妙な違いも分からないこの人たちに食べさせる分には差し支えないだろうけど。
そういうことしてたって言ったら、潤は許してくれるかな。
色々含めて考えなきゃならないことがたくさんあるな…。
中々できないことだけど、本当は、大翔のためだけに生きてたいんだよね。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：はるか | 作成日時：2021年1月8日 19時
