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あまり良く寝付けないまま朝を迎えた。
今日も晴れ。
また重岡くんに会えるかもしれない。
そう思ったら、憂鬱な朝の支度も、見飽きた通学路もいつもより鮮やかに見えた。
校門のところで車を降り、少しだけ軽い足取りで昇降口へ向かう。
すると後ろから、また昨日みたいにあの声がした。
「Aちゃん！」
すぐに振り向くとそこにいたのはやっぱり彼。
「おはよう！」
なんて元気に言ってくれるから、
「…おはよう」
と私も少しぎこちなく返事をした。
いつぶりだろう。
私に挨拶をしてくれる人がいるのは。
普通に話しかけてくれる人がいるのは。
嬉しくて涙が出そうになった。
でも、そんな幸せな時間はあっという間に通り過ぎ、下駄箱まで行くと彼は、すぐに色んな人に囲まれてしまった。
その中には女の子もいる。
そしてその女の子にも名前を呼んで、おはようと微笑みかけていた。
それを見て私は我に返った。
そうだ。
彼はまだ私がお金持ちの子だと知らないから、普通に話しかけてくれているだけだった。
彼は優しいから、私にも笑顔で話しかけてくれているだけだった。
私だけが特別なんかじゃなかった。
視界がぼやけて、私は俯いたまま走って教室へ向かった。
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作者名：みなみ | 作成日時：2017年3月7日 13時
