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8＿ ページ8
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「今日はいつもより遅いですね」
「少し残って勉強してただけだよ」
「あまり遅くならないようにしてくださいね」
「分かってる」
クーラーの効いたひんやりとした車の中で、外を流れていく景色を見る。
でもその景色なんか私の目には入っていなくて。
思い出されるのは彼のことばかり。
目を大きく開いて夕日に興奮する幼い少年のような顔。
少し変わった位置に笑窪をつくって真っ直ぐな瞳で私に笑いかける笑顔。
夕日を見つめる優しい横顔。
全部全部、脳裏に焼き付いて離れなかった。
彼の表情、声。
そして、腕を掴まれた瞬間の胸の高鳴り。
そんなことばかりが頭の中をぐるぐる回る。
そうこうしている内に家に着いた。
遅くなったこと、お父さんに怒られるかななんて思っていたら父の車はなかった。
そしてふと、今日から三ヶ月間海外出張に行くと言っていたことを思い出した。
それならば遅くなっても怒る人がいない。
またあの場所で重岡くんとゆっくり話せる。
そんなことを考えたらまた胸が高鳴った。
でも、どうして。
どうして私はさっきから重岡くんのことばかり考えてるんだろう。
どうして彼のことを想うだけで頬が熱くなるんだろう。
どうしてまた会えるというだけでこんなにも明日という日が楽しみなんだろう。
散々考えて、ある一文字が頭をよぎったけれど慌ててかき消して自分の部屋へ向かった。
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作者名：みなみ | 作成日時：2017年3月7日 13時
