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重岡くんとの再会なんて果たせないまま、気付けば卒業式の日を迎えていた。
抜け殻のように過ごした、彼が居なくなってからの日々。
卒業式なんて涙の欠片も出なかった。
式が終わり、皆がアルバムへの寄せ書きやら、写真撮影やらを始めたので、私はそっと教室を出た。
結局私は一人になる運命だったんだろうな。
そう思いながら校門までの道を歩く。
ここを歩くのも最後だけれど、隣に彼が居ないんだったら、そんなのどうだっていい。
のろのろと歩いていると、後ろから私の名前を呼ぶ声がした。
一瞬重岡くんなのではないか、と淡い希望をもったけれど、その声は重岡くんよりもずっと低くて、深い響きのある声。
「山下さん！」
「…藤井くん？どうしたの？」
「最後やから…」
そう言って彼は自分の卒業アルバムとペンを私に差し出した。
「え…？」
「書いて！」
戸惑いを隠せないまま、とりあえず受け取る。
三年間楽しかった、なんてみんな書いていて、私も書こうかと思ったけれど、そんな大嘘書く気になれずに、
ありがとう
ただ一言だけ書いた。
気付いたら、彼は横で私のアルバムに勝手にメッセージを書いていた。
誰も何も書いていないまっさらなそのページに、男の子らしい字で、
三年間ありがとう 流星
と書いてくれた。
「ありがとうな！」
「藤井くんこそ…」
「俺はただ山下さんに書いて欲しかっただけやから。じゃあ俺そろそろ戻るな、またいつかな」
「あ、うん。ありがとう」
彼に小さく手を振った。
ふと、どうして私に書いて欲しかったんだろう、と思って、彼の書いてくれたアルバムを見返す。
見開き二ページ分もあるメッセージ欄の端に書かれた彼からのメッセージ。
何となく次のページを見てみると、
そこにも彼からのメッセージがあった。
ずっと好きでした。
不器用な文字に涙が零れた。
私と重岡くんをいつだって応援してくれた藤井くん。
彼の本心を知った今、私は彼の想いに心が傷んだ。
ごめんね。ありがとう。
私はもう二度と歩くことのないこの道を、踏みしめた。
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作者名：みなみ | 作成日時：2017年3月7日 13時
