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家に着くと、食事もそこそこに部屋へと駆け込んだ。
まだ熱を帯びている私の体。
頬にそっと手を当てれば、彼のブレザーの感触が蘇る。
一気に胸が高鳴って、私はベットへ倒れ込んだ。
恋がこんなに楽しいなんて、知らなかった。
自分を必要としてくれる人がいる。
ただそれだけでも、私にとっては大きな幸せ。
携帯を開けば、彼の名前。
昨日まで父とお手伝いさんの名前しか入っていなかったから、ほとんど触ることは無かったけれど、画面を見るだけでこんなに嬉しいなんて。
すると、彼から早速メッセージが届いた。
鼓動が早くなる。
他愛ないやり取りだけでも楽しくって、好き、が溢れる。
こんな気持ちは初めて。
私の初めては何もかも彼で埋め尽くされる。
これから彼と、こうやってたくさんの幸せを、思い出を重ねていくことが出来る。
空っぽの私の心がどんどん満ちていく。
この時の私は、目の前に広がる光に満ちた世界にただただ幸せを感じていた。
この先に待つ運命なんて、知らずに。
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作者名:みなみ | 作成日時:2017年3月7日 13時