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まるで生き地獄。
こんなにも近くに聞こえるのに、壁1枚隔たれているだけで萎える。
その声を、その顔を向けているヤツとはどんな関係だ？
"ソレ"
を独り占めしてるヤツは誰だ？？
気持ちを押さえつけるように一気に酒を煽り
頭が痛くなると同時にタバコに口付ける。
壁1枚、向こう側を描き
どんな景色なのか、どんな世界なのか
そういうことを想像するのが得意になってきた頃、
右手首にはしばらくは消せないであろう跡と
愁色が広がり、到底人に会える気配がなくなってしまった。
今夜は満月。
今夜だけは世間から白い目で見られるようなことしても
お月様しか見ていない。
これからがいいところだから
どうか見逃して。
目の前の扉に向かい
親を叩き起すのと同じ力で叩く。
あくまでこれは苦情とかじゃないで？
君を恋い慕うやつはここにも居るっていうアピールのつもり。
留守でも使おうとか、考えとんのか。
一向に出てくる気配はない。
ドアスコープを覗くと黒く
外から見えないように隠されていることに気がつく。
それじゃあどうすればいいんだ？
このまま深夜に他人の扉の前で立ち尽くしてても
一歩間違えたら通報レベル。
でもよー考えてみ？
開けれないことは、ない。
一度部屋に戻るか。
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さっきから扉を叩いたりチャイムを鳴らしたり
忙しない隣人さん、こと永瀬さん。
大家さん曰く大学生だから最近は帰ってきてないと言っていたが、
いつ帰ってきてもいいように扉の前に腐らないものと置き手紙を書いて置いてきた。
しかし、その存在を忘れた頃に
ついに永瀬さんと鉢合わせした。
美形だったし、友達付き合いもそういう関係も多いんだろうな〜と薄ら思った。
永瀬さんと初めましてしてからまた家にいない日が多かったっぽいが
最近はずっと家に籠っているのか、ずっとゲームの音が聞こえてくる。
そんなことがあっての今日だ。
なにか緊急かと思いインターホンを見ると
常人とは思えない笑みを浮かべていた
その後しばらくしてドアの隙間から入ってきた紙を確認すると、
拝啓
佐々木A様
そちらを好んでいる者です。
どうかこの扉を開けてみてはくれませんか？
追伸
怪しい者ではありませんのでご安心ください。
ただの『隣人』です。
永瀬廉
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作者名：ジャックと豆の森 | 作成日時：2023年8月2日 5時
