第7話 ページ8
千秋side
恋人(仮)になって、恋人らしいことをしようと試みたがそもそも恋愛経験が無いのだから何をしたらいいのか自体が分からない。
手を繋ぐのは友達なのか。
髪を結び合いっこするのは友達なのか。
抱き付き合うのは友達なのか。
考え出したらキリがなかった。
「ねぇ、杏」
「どうしたの？千秋」
「恋人って何かな」
「え？」
「僕たち、恋人(仮)として今は過ごしてるじゃん？でも、本当に恋人らしいこと出来てるのかなって」
もし、出来てなかったらこの関係にも意味が無くなるんじゃないか。
それが僕にとって恐ろしいことなんだ。
「恋人らしいこととか僕にも分からないけど、それって特別何かしなくちゃいけないとかあるの？」
「杏？」
「他人が何と言おうと僕たちが『恋人』だと思えば全て『恋人らしいこと』になるんじゃないかな？」
そうだ。
大切なのは僕たちの意識なんだ。
「そうだよね！ありがとう、杏！」
「ううん！でも、そんなに恋人らしいことしたいなら……」
「えっ……」
杏に肩を押され、ベッドに沈み込んだ。
このアングル……壁ドンならぬベッドドン……？！
「あ、杏……」
杏の顔が近付いてくる。
あまりの光景に、思わず目を閉じてしまった。
「……なーんてねっ！」
「え……」
肩を押さえ付けていた杏の手が離れ、体が自由になる。
「びっくりした？」
悪戯っぽく笑う杏に、今までのことは全て杏のお遊びだったのだと気付いた。
「びっくりするに決まってるでしょ？」
そう笑って返したのに、何故か心の中にぽっかりと穴が空いているような感覚に襲われた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：月羽and月翼 | 作成日時：2020年12月30日 0時
