真冬に咲く薔薇 (ページ26)

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TN

僕の横でうとうとしているレイを見てると、自然と口角が上がってしまう。

「寄りかかっていいのに」

「それは、ダメ」

お酒が入っていても、僕達しかいない空間でも、物理的な距離を保とうとするのは本能的なものなのだろうか。

逆に男心を刺激するって、知らないのだろうか。

洗い物をしながら、クンは目線で僕に、レイを部屋に運んでって合図をした。

ドヨンがいれば大体連れて帰るんだけど、今日は1人だからね。

「ちょっ、テン！？」

「いい子ちゃんは黙って運ばれてね〜」

急なお姫様抱っこに、レイは目をまんまるくさせてこっちを見てくる。

ずるいよね、上目遣い。

そのまま僕のベットに下ろして、布団を被せる。

さすがに同じ所で寝ようとするほど、無責任じゃないよ。

「良い夢が見れますように」

軽く手にキスを落とした時には、もう夢の中に堕ちていたようで。

その可愛い寝顔を見ながら頭を撫でていると、寝ているはずのレイから、僕も大好きなある人の名前が出てきた。

君に出会って一目惚れをした僕が、必要以上に踏み込めない理由。

彼女自身が気づいていて隠しているのか、はたまた気づいていないのかは分からないけど、その秘密を抱え込みながら、静かに部屋を出た。